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パチンコ業界で“オンライン実機プレイ”が流行らない3つの理由…メーカー&店舗の裏事情

文=山下辰雄/パチンコライター
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一般的なパチンコ店内の様子(「Wikipedia」より)

 この春、新型コロナウイルスの流行によって、対面式サービスを行っていた業界は大打撃を受けた。そんな中、多くの業界で売り上げ減少を補う手段として“オンライン”に活路を見いだそうとする流れが加速する一方、パチンコ業界では“オンライン実機プレイサイト”がひっそりとサービスを停止している。

 オンライン実機プレイサイトとは、2018年4月に始まったパチスロ専用サービス「アミュライブ」、そして18年12月に始まったパチンコ専用サービス「ニコハン」である。アミュライブは19年11月にサービスを終了、ニコハンは20年4月にサービスの無期限休止を発表した。

 なぜ、パチンコ業界ではオンラインサービスが支持を得られなかったのか――。

メーカーの不協力と店舗からの反発

 オンライン実機プレイサイトが流行らなかった理由は、大きく分けて3つほど考えられる。1つめは、メーカーの協力が得られなかったことだ。

 アミュライブは、パチスロを開発・販売しているメーカーに許可を取らずにサービスを開始したため、もめてしまったのである。そんな事情を知っている後発のニコハンは、各メーカーにきちんと連絡を取ったものの、台の使用許可が下りたのは“マルホン”のみ。他には、すでに倒産している奥村遊機の台で権利がクリアになっているものしか使えず、魅力に乏しいラインナップだった。

 もともと、パチンコ業界は新しいことへの挑戦には腰が重いところがある。その上、いくつかのメーカーは直営のパチンコ店を経営しているので、ライバルになりかねないサービスに全面協力するわけにはいかなかったのかもしれない。

 また、メーカーにとって大事なお客さまであるパチンコ店は半日しか営業できないのに対して、オンラインサービスは24時間稼動できるので、パチンコ店から反発が起きるのを恐れたということも考えられる。

難しかった「不正ゼロ」の証明

 オンライン実機プレイサイトが流行らなかった理由の2つめは、不正防止の点でユーザーの信頼を得られなかったことだ。

 実店舗であれば、所轄の警察署の許可を受けて運営するだけでなく、業界独自に独立機関(一般社団法人遊技産業健全化推進機構)が随時立ち入り検査をするなど、不正撲滅体制が整っている。もちろん、オンライン実機プレイサイトも健全に運営をしていたが、不正がゼロだと担保してくれる団体・管轄がいまいち明確ではなかった。

 アミュライブもニコハンも、実機をカメラで映し、ユーザーがパソコンやスマホで遠隔操作して遊技する仕組みだった。管理体制が厳しい実店舗でさえ、大ハマリすれば「裏で店が悪さをしているのでは?」と疑うユーザーも出てくる業界である。どこに設置されているかわからないオンラインサービスでは、ハマった途端に「ほら見ろ、インチキだ」などと急に冷めてしまってもおかしくない。

 また、台を打つためにはポイントを購入するという“課金”が必要なサービスなので、「それなら無料で打てるサイトや、買い切りのアプリの方がマシだ」という声もあった。

オンラインはコスパが悪い?

 そこから見えてくるのが、流行らなかった3つめの理由の“費用対効果”である。

 家でパチンコ・パチスロを思う存分打ちたいなら、1000円くらいで買えるスマホ用アプリや、サミー系列が運営する「777TOWN.net」などでいいと考える人も多い。それらのサービスは実機ではなく、玉の動きもデジタルで表現されている実機シミュレーターなのだが、人気台が数多く提供されているので、「とことん打ち込みたい」もしくは「見たことのない演出を出したい」という人にとっては十分事足りてしまう。

 パチンコ・パチスロのユーザーは“演出を見るのが好きな人”と“ギャンブルとして好きな人”に分かれる。オンライン実機プレイサイトは当然ながら換金は無理で、景品交換も実装できなかった。換金目的なら実店舗に行けばいいし、演出を楽しみたいだけなら実機である必要はなく、アプリでいいのだ。

 アミュライブは景品への直接交換ではなく、貯まったポイントを使えば「景品交換の抽選に参加できる」という回りくどいやり方で“換金性”を回避した。ニコハンはイベントの際、獲得出玉数が上位のユーザーに賞品を贈るという形を取った。実店舗での“三店方式”さながらのグレーなやり方しかできないところに、運営側も手探り状態だったことがうかがえる。

 業界規模の縮小に歯止めがきかず、さらには新型コロナの影響でパチンコ店へ足を運ぶユーザーが減る中、自宅にいながらいつでも簡単に遊技できるオンラインサービスは、業界にとって閉塞感を打破する大きな一手になるはずだ。

 とはいえ、これまでと同様に小手先のごまかしでやろうとしたり、見切り発車で進めたりしていては、いつまで経っても軌道に乗せることはできない。本気でオンラインサービス化を進め、成功させたいのなら、「メーカーとの連携」「信頼性と安全性の担保」「課金に対する見返りの提供」という3つをクリアすることが必要になるだろう。

(文=山下辰雄/パチンコライター)

山下辰雄/パチンコライター

山下辰雄/パチンコライター

パチンコライターとしてBusiness Journalにて多くの記事を寄稿。

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