こうした事態を受け、当然のことながら、中央政府はダム補修工事を進めているが、地方自治体レベルでは資金や人材不足もあり、危険除去や補強作業は後回しにされてきた。実際、1998年には4000人以上が命を落とし、数百万人が住む家を失うという大洪水が発生した。その原因は「森林の伐採」と「土壌の浸食」といわれたものだ。そのため、急遽、中国政府は揚子江上流での森林伐採を禁止し、再植林計画を発動することになった。

 ダムが決壊すれば、農地は水没し、農作物の収穫はゼロになってしまう。中国にとっては水との戦いは食料確保の戦いでもある。そんな「水と食の戦い」の経験を活かし、中国はアフリカの国々にダム建造というインフラ整備を推進している。しかし、自国内で発生する豪雨やダムの決壊という危機的状況に対して、十分な対応ができていないこともあり、アフリカ諸国からは中国によるダム援助プロジェクトに対して懸念する声が上がり始めた。

世界中で豪雨被害

 他方、中国とは国境を接するベトナムでも巨大台風や地球温暖化が原因と目される海面上昇による経済的損害が増え続け、すでにGDPの1.5%が奪われている。これまで、南シナ海の権益をめぐり対立を繰り返してきた中国とベトナムであるが、今年7月以降、自然災害への対応や危機管理面での共同事業を推進することで新たな合意を形成する動きが出てきた。災害への危機感が対立する両国を歩み寄らせるきっかけをもたらした感がある。まさに「禍を転じて福と為す」となるものかどうか。対立する両国の今後の動きが注目される。シンガポールやインドネシアでも大雨の被害が報告されている。

 さらに、南アジアに目を向けると、バングラデシュでは国土の3分の1が水没してしまった。例年6月から9月にかけてはモンスーンの季節といわれるが、今年は雨量が半端なく多い。隣国のインドでもこれまでにない規模の洪水が襲い掛かっている。ユネスコの世界遺産に認定されているアッサム州にあるカジランガ自然公園では85%が水没し、サイなど多くの野生動物が命を失った。

 バングラデシュに流れる230の河川の内、53はインドとの国境線を形成しており、源流となるヒマラヤ山脈から流れ出るブラマプトラ河とガンジス河は両国内を横断する。こうした大小数多くの河川が氾濫したため、400万人が住む家を失ってしまった。また、インドの北部に位置するネパールでも大雨の影響で土砂崩れが相次ぎ、多数の人命が失われている。

 被害にあっているのはアジアだけではない。北米のカナダやアメリカ北部でも6月だけで23億ドルの被害が発生している。アメリカでは南部を中心にハリケーンが猛威を振るい、6億5000万ドルを超える経済的損失が発生。中米から南米ブラジル、ペルーやチリにまで大雨が降り続いているのである。

 その上、ヨーロッパでも被害は拡大する一方となっている。フランス、ドイツ、チェコ、ポーランド、オーストリア、ハンガリー、ウクライナと洪水は広がり、2万2000棟以上の建築物が飲み込まれてしまった。被害総額は1億5000万ドルを超える。ロシアでも「100年に一度」の大洪水が毎年のように発生するようになった。さらには、南半球のニュージーランドでも「500年に一度」と形容される程の深刻な被害が発生している。

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