NEW
藤和彦「日本と世界の先を読む」

コロナ禍で出生数が大幅減の兆し…高齢者等を守る施策、若者層にしわ寄せというジレンマ

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
【この記事のキーワード】

, ,

景気や出生数への影響

 先進諸国の対応は非常に倫理的なものであり、評価されてしかるべきだが、深刻な副作用をもたらすリスクがある。社会的弱者を守るための手段を講じたことで、経済が大きな打撃を受け、そのしわ寄せが若者層に及んでいるからである。

 米ブルッキングス研究所は6月、「新型コロナウイルスの感染が拡大している米国で、出生数が最大50万人減少する可能性がある」との予測を発表した。カップルが一緒に自宅にこもっていたことから、「ベビーブームが起きるのではないか」との見方があったが、パンデミックによる経済的損失や将来への不安などから、生まれる子供の数は減るというわけである。

 米国経済は2月に景気後退入りし、失業率が10%台で推移しているが、失業率の上昇は出生数に影響する。米国の出生数は、世界恐慌時の1930年代に250万人以下まで急減し、1970年代の石油ショックでも300万人近辺にまで大幅減少した。景気の動向との相関性が高いのである。

 リーマンショック後の米国の15歳から44歳までの女性の1000人当たりの出生数は、リーマンショック以前の69人から63人へと約9%低下し、出生数は約40万人減少した。その後もこの傾向が続いており、2019年の出生数は約370万人と過去36年間で最低水準となり、08年以降でみると20%以上減少した。スペイン風邪が大流行した1918年は、戦争特需のおかげで米国経済は不況ではなかったが、出生率は12.5%減少した。

 今回は、パンデミックと不況のダブルパンチである。米国の今年の出生数は大恐慌以来の300万人割れとなってしまうのかもしれない。

 欧州でも、「少子化」の兆しが現れている。欧州5カ国に暮らす35歳以下の数千人を対象にした調査で、「今年子供を作る予定があるか」と聞いたところ、「子作りを先延ばししている又は完全に諦める」という回答が60~80%と多数を占めた(8月9日付クーリエ・ジャポン)。

 驚くのは「子供をひとり減らせば、排出される二酸化炭素を年間58.6トン減らすことができる」との試算が出回っていることである。パンデミックにより資源多消費型文明の問題に改めて気づかされた若者たちの間で「少子化」の傾向が強まっているのである。

 日本の出生数は、2019年に86万人と統計開始後初めて90万人を割り込んだが、今年は80万人割れになるとの予測がある(8月22日付日本経済新聞)。

 このように、コロナ禍の下、先進諸国では「少子化」が一気に進んでしまうのではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

情報提供はこちら
RANKING
  • 連載
  • ビジネス
  • 総合