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小笠原泰「日本は大丈夫か?」

「やってる感」至上主義の安倍政権を支える地方の有権者たち…反エリート主義と真逆の日本

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 当然、保守的黒人層からの反発はあるのだが、概ね好意的に受け止められているようだ。そもそも黒人層は民主党支持者が多く、加えてバイデン氏を支持する層が多いことで知られているので、ハリス氏がインド系でもあることは黒人層に強いバイデン氏の強みを補完すると思われる。実際、共和党と拮抗するフロリダ、ミシガン、ノースカロライナ、ジョージア、テキサスといった州では、アジア系米国人のなかでインド系が最大グループを構成しているといわれているので、それを意識した可能性がある。つまりマイノリティの有権者を念頭において、純粋な黒人であるライス氏より、人種的にバランスのとれたハリス氏を選んだということではないか。

トランプ氏の狭量な政権運営との対比

 3つ目は、候補者としての新鮮味であろう。ライス氏は、民主党政権とのつながりが強い。クリントン政権2期目で、国家安全保障会議スタッフ、アフリカ担当国務次官補を務め、オバマ政権では国連大使を務め、退任後は同政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を政権交代まで務めている。国務長官として政権の中枢に長くいたヒラリー・クリントン氏と同様に新鮮味に欠ける候補である。

 また、この経歴をトランプ氏が攻撃材料にする可能性も高い。それに比べれば、ハリス氏の副大統領候補指名は新鮮味を出せると考えたのかもしれない。また、ハリス氏はカリフォルニア州検事総長を務め、悪を正す正義のイメージがあり、恣意性の塊のトランプ氏へ対抗するイメージも有している。

 4つ目は、トランプ氏と自分の政治家としての対比であろう。ハリス氏は、6月の民主党のテレビ討論会でバイデン氏は人種差別を肯定する上院議員たちと数十年前に取り組んだ仕事を自慢していると批判した。そのハリス氏をあえて選ぶことでバイデン氏が狙ったのは、批判者を徹底的に排除するトランプ氏とは異なり、自分は多様な意見を尊重し、合意形成を目指す懐の深い政治家であることを強調し、トランプ氏の狭量な政権運営との対比を鮮明にする狙いがあったと考えられる。 

 最後は、バイデン氏の年齢である。トランプ氏も高齢であるが、バイデン氏は大統領に就任すれば78歳で大統領になることになる。本人も一期のみと言っているが、大統領という激務とその年齢を考えると、在任期間中に副大統領が大統領に昇格する可能性がないとはいえない。その可能性を考えると、選挙経験がないライス氏が適任の副大統領かは疑問の余地がありそうだ。一方、ハリス氏は大統領候補戦に出馬し、一時はトップを走り、大統領になる意欲をもっている。バイデン氏同様の穏健派であり、バイデン氏の後継者として、大統領に昇格する準備のできた副大統領候補という意味でハリス氏を選んだといえるのではないか。

 以上は、正論としてのハリス氏選択の理由である。今後、トランプ氏はハリス氏に対して、支持層の喜びそうなことなら「言ったもん勝ち」の根拠のない「いちゃもん」をつけるであろうが、これはトランプ氏の政治ショーでしかないので、ハリス氏の副大統領候補としての資質についての議論にはならないだろう。

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17:30更新
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