それでも、武田薬品は日本を代表する企業としてよりも、世界の市場で競争し、生き残ることを選んだ。大衆事業薬の売却は、同社が日本の企業としてではなく、グローバル企業としての生き残りを目指す不退転の決意を明確にしたことといってよい。

 今後、同社では各国市場を熟知した人材登用の重要性がこれまでにまして高まるだろう。武田薬品の新薬開発体制には不安な部分がある。研究開発体制の強化やM&Aなどのために、各国の医療規制や市場動向を熟知した優秀な人材確保は喫緊の課題だ。優秀な人材は引く手あまたであり、それなりの報酬を支払わなければならない。そのためには、成果主義の徹底なども避けられない。そうした改革は相応のスピード感を持って進められるだろう。

 それは、日本企業に無視できない影響を与えるだろう。同社以上に日本企業全体への影響は大きいといっても過言ではない。日本人ではなく、外国人のプロ経営者を招聘し、国籍に関係なく各分野で専門性の高い人材を登用する事業運営が持続的な成長につながるのであれば、経営文化を変えるほどの意気込みをもって改革を進めなければならないと考えるわが国企業は増えるだろう。反対に、武田薬品が成果を実現できず、さらなる資産の売却などを余儀なくされる場合、改革を目指す考えは退潮する可能性がある。

 コロナ禍の世界経済の現状を見ると、医療・薬品分野の成長性は高いとみられる。その中で、武田薬品が外国人のプロ経営者の指揮によってチャンスを取り込めるか否かは同社の成長だけでなく、日本企業の経営や事業運営にかなりの影響を与えるだろう。経営の専門家の中には、同社が自社の企業文化を刷新してグローバル企業としての競争力発揮を目指すのは容易なことではないとの指摘もあるだけに、これからが注目に値する。

(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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