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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

1人分の飲食代をクレカ決済、会社の経費になる?重加算税賦課→不服申立てで大逆転!

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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「Getty Images」より

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな経理は「修正経理」です。

 税務調査で不正が見つかると、のちの裁判や不服申立てに備えて、調査担当者は証拠を保存します。書類をコピーし、社長に一筆書いてもらって、客観的に不正があったと認められるようにしています。

 この「一筆」は、昔は申述書(もうしのべしょ、しんじゅつしょ)を一から書いてもらっていましたが、そのうち調査担当者が用意したものに署名捺印をしてもらうだけになり、その後は、調査担当者に加えて別の職員立ち会いのもと、社長に事実確認を行い、それを記録して最後に署名捺印をもらう「質問応答記録書」を作成するようになりました。

 社長が不正を認めた申述を記録したものであり、証拠として信頼できる紙ランキング第1位の質問応答記録書ですが、これがのちの不服申立てによって、証拠として認められなかった事例があります。

 調査担当者は、社長の個人名義のクレジットカードで支払われた飲食代が、法人の損金とされている事実を確認しました。社長に話を聞いたところ、クラブやレストランで決済したもので、これは業務に関連するものではなく、個人的な支出であるとわかりました。また、それらは社長ひとりか業務に関係のない知人と利用したものでした。

 調査担当者は、カードの利用明細にあったひとつの飲食店に反面調査を行い、店の伝票から社長がひとりで来店していた事実を確認しました。個人的な支出であれば、法人の損金にはできません。

 税務調査では、これらの飲食代について、社長への役員給与ではなく社長への貸付金として処理されました。役員給与とされるのがもっとも厳しい処理なので、調査担当者がやや譲歩したのかもしれません。ただし、しっかりと、仮装があったとして重加算税を賦課されています。

 これを受けて、法人と社長は金銭消費貸借契約書を作成し、利息を設定しました。通常であれば、これで一件落着する税務調査ですが、その後の法人の不服申立を受けて、事態は大きく変わります。

「自分名義のカードで決済したのは、法人のクレジットカードを作成していないからで、大部分は取引先との飲食であり、ひとりでの飲食についても得意先と同席して自分の分のみ負担したもの、得意先の飲食店でのひとりでの飲食で、すべて法人の費用です。だから、個人的な費用として貸付金にされたことは納得がいかない」

 実際に、社長が利用していた他の飲食店にも臨場して確認したところ、取引先との利用時にも、社長のカードで決済された事実が確認できました。飲食代には接待らしきものが含まれていたのです。では、なぜ社長は質問応答記録書に署名捺印をしたのか。

「質問応答記録書の内容に対し、事実と異なると反論しました。しかし、調査担当者や顧問税理士からサインするように言われて、署名押印したのです。それについて納得はできておらず、内容はすべて真実に反しています。実際には、私名義のクレジットカードで支払った飲食代金は個人的な飲食代ではなく、すべて交際費です」

 社長は申述を覆しました。明細にあった店の伝票から、利用人数がひとりだったと確認できたとしても、その利用の目的・態様は明らかではありません。すべての利用が個人的な飲食であることを裏付ける証拠は認められないわけです。

 そもそも、社長の発言も個々の支出について言及したものではなく、具体性が乏しい上、その内容を裏付ける客観的証拠はありません。調査担当者が示した証拠では、不正と認定することはできない。交際費なのか個人的支出なのかはわかりませんが、社長が個人的な飲食であることを認識しながら会社の経費とした仮装の事実は認められなかったのです。

 知識がないと、知識がある人の都合の良い方向に促されてしまいます。顧問料を支払っていた税理士ですら、調査担当者の味方をすることがあります。自分を守るのはいつだって自分自身なのです。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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