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ブランディングの専門家が語る、コロナに打ち勝つ社員ブランディング(1)

給料で会社を選ぶとやる気が出ない?倒産続出の飲食業界で鳥貴族&ざうおが注目される理由

松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター
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鳥貴族の東久留米店(「Wikipedia」より)

 みなさん、こんにちは。元グラフィックデザイナーのブランディング専門家・松下一功です。

 長引くコロナで苦行を強いられている飲食業界。個人店では倒産が相次ぎ、クラウドファンディングでは数々の救済プロジェクトが並び、多くの企業が正念場を迎えています。そんな中で独自の経営方針を持ち、注目を浴びているのが「鳥貴族」です。

 緊急事態宣言が出た際には、全店舗休業というニュースで驚かされましたが、代表取締役社長の大倉忠司氏のツイッターやブログでは、フォローしている社員に向けての明るい内容の発言が多く投稿されました。また、6月には、社員の独立支援制度の充実を目的とした新業態店舗をオープンするなど、コロナと戦いながら、社員の成長やケアにも力を入れている印象を受けます。

 そんな鳥貴族の取り組みや姿勢を見て、我が身を振り返った企業も多いのではないでしょうか? そして、社員教育・社員満足がブランドを成長させる上で欠かせないものだと気づいた方もいることでしょう。

 そこで今回は、社員教育・社員満足がブランドの成長にどうつながるのかを解説するために、最新の社員ブランディング論についてお伝えします。

給料で会社を選ぶとやる気が出ない?

 はじめに確認しておきたいのですが、みなさんは今の会社を選ぶときに、何を基準に選びましたか?

 業界、職種、成長への期待感、給料、福利厚生など、判断基準となるものはたくさんありますが、「何よりも給料の金額が大事!」という方は危険です。今の時代、こういった考えの方はだいぶ少なくなってきましたが、まれにいらっしゃいます。もちろん、仕事内容に見合った対価を期待することは当たり前なのですが、人間とは不思議なもので、給料をベースに置くと仕事へのモチベーションが上がらず、やりがいを感じにくくなるのです。

 そして、ビジネスパーソンとしての成長も期待できず、最悪の場合はお荷物社員になってしまうことも……。

 会社側も、かつては仕事の負荷を下げて給料を上げることがいいとされていた時代もありました。工場などでも、機械化を進めて単純なルーティン作業を増やして、作業者の負担を減らし、さらに人員的なミスや事故を防ごうとしましたが、実際に試してみると、ミスや事故率は下がらなかったという事例もあります。

 これには、人間が持っている「承認欲求」や「仕事をする価値」が大きく関係しています。これらが満たされていないために、仕事に対するモチベーションが上がらず、会社の業績に結び付かず、ついには会社や仕事への不満が増えて、転職を考えたりするのです。

 では、会社側は何をどうしたら社員のモチベーションを上げて、大事な戦力の一員に育て上げ、他社への流出を防ぎ、ひいては会社の成長をかなえることができるのでしょうか?

社員ブランディングのベースは「共創」

 まず伝えたいのは、社員ブランディングの根底には「共創」があるということです。私はこれを「社員ブランディング1.0」と呼んでいます。「共創」とは、読んで字のごとく、新しい文化・価値・空間などを会社と消費者が「共」に「創」り上げていくことを指します。

 わかりやすい例として、「釣船茶屋 ざうお」で説明しましょう。ざうおでは、誕生日や記念日などのイベント対応をしています。これが、なかなか手が込んでいて、デザートプレートを用意したりハッピーバースデーソングを歌ったりするのはもちろん、本格的な太鼓演奏で場を盛り上げてくれるのです。

 こう聞くと、ざうおのイベントサービスは「顧客サービスが充実しているのだな」と思うでしょう。でも、実際にはそうではありません。

 実は、バースデーソングや太鼓演奏などのパフォーマンスでお客さんに喜んでもらうことで、スタッフたちの「承認欲求」が満たされ、仕事への「モチベーションアップ」につながっているのです。つまり、顧客満足度アップの施策だけでなく、社員教育のひとつでもあるのです。

 また、ざうお以外にも、独自の「共創」を大事にしているブランドもあります。たとえば、「スターバックス」は「サードプレイスの提案」をコンセプトに、心地よい空間や文化を高いレベルでつくっています。お客さんは、オシャレな店内で美味しいコーヒーを飲み、スターバックスが作り上げてきた文化・空間を共有しながら楽しむことができます。

 テイクアウトをする場合も、スターバックスのボトルを持ち歩くことで、スターバックスの文化を共有することができます。しかも、SNS戦略的にも有利です。

 同じように文化を共有しているのが、「ハードロックカフェ」です。独特の雰囲気が魅力的なお店には、ロックなどの音楽好きなスタッフとお客さんが集まり、その文化を共有して楽しんでいます。

 このように、スタッフとお客さんが文化・場・価値観を「共創」することが社員教育の基礎となり、ブランドを育てる大事な一歩となるのです。

 次回は、現在のトレンドにあたる「社員ブランディング2.0」と、その一歩先を行く「社員ブランディング3.0」についてお伝えします。

(松下一功/ブランディング専門家、構成=安倍川モチ子/フリーライター)

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