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藤和彦「日本と世界の先を読む」

安倍首相、地政学上の大変化もたらす…アジアが米中冷戦の最前線に、中国包囲網が形成

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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 インド軍関係者が「2つの島の領土はインドにとって新しい空母のようなものである。本土から遠く離れたこの地域で海軍の範囲を拡大できる」と述べるように、インド側は「将来攻撃を仕掛けられた際に中国の海上貿易を阻止することで対抗する」という戦略の実現に向けて具体的なアクションを取り始めているのである。

 アンダマン・ニコバル諸島の開発は、インドとパートナーを組む関係諸国に軍事基地として提供するという思惑もある。日本政府が2016年8月、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱した。この戦略に参加する主要国は日本、米国、豪州、インドである。これに対し、中国は「『一帯一路』構想など対外的な拡大政策を進める同国に対する封じ込め政策にほかならない」と反発したことから、インドは当初「対中関係との間合いを見つつ対応する」という付かず離れずのスタンスだった。インドは従来から国際的な秩序づくりに反対であり、「非同盟」を標榜していたが、「中国の脅威」という現実の前に方針の転換を余儀なくされている。

中国の戦略の失敗

 インドの動きはこれだけにとどまらない。インドメディアが8月上旬に報じたところによれば、「ヴァルマ・インド駐ロシア大使がロシアのモルグロフ外務次官に対して、中国に対抗するためのインド太平洋戦略に加わるよう要請した」という。

 インドとロシアとの関係は良好であり、特に軍事面でつながりが深い。インド国防相は7月上旬、「ロシア製ミグ29戦闘機21機とスホイ30戦闘機12機を購入する」と発表したが、インドが保有する武器の約7割はロシア製である。ロシア側も中国よりもインドに対して優先的に武器を売却しているといわれている。ロシアも極東地域の沿海州などの領有権をめぐり中国と対立しており、インドとは「呉越同舟」の関係にある。

 前述のインド太平洋戦略の理念が「自由で開かれた」とされていることから、米国は権威主義体制のロシアに対して同戦略への参加を直接要請しずらい状況にあるが、インドの要請でロシアが参加すれば「御の字」である。

 ビーガン米国務副長官が8月31日、米印戦略的パートナーフォーラムの場で「インド太平洋集団安全保障機構(インド太平洋版NATO)」の樹立に言及するなど、米国政府の「中国封じ込め」戦略は加速している。

 中国の戦略の失敗により、インドが主導する形で急速に「対中包囲網」が形成されようとしているが、このことはアジアが米中冷戦の最前線になることを意味する。安倍首相が蒔いた種が、思わぬかたちで地政学上の大変化をもたらそうとしているのである。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

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