NEW

レスリング協会で“リアル『半沢直樹』”の内紛…専務理事が国会議員に“倍返し”か

文=杉本良一
【この記事のキーワード】, ,

 パワハラ騒動の根底にあったのは、松浪理事長が伊調選手を日体大に引っ張り、“日体大の人間”として前人未踏の偉業、つまり五輪5連覇を達成させ、その栄誉を栄氏が吉田沙保里選手や伊調選手らを指導してきた至学館大学から横取りしようとしたことに始まる。伊調選手のため大学の教員か職員のポストを用意し、彼女と「きわめて親密な」コーチの田南部力氏(警視庁)を付属高校に赴任させ、このコンビでの偉業達成を目指させる腹積もりだった。

 誤算は、伊調選手が日体大の教員や職員への就任にまったく関心を示さなかったこと。松浪氏は彼女の恩師を使うなど、あらゆる手段で試みたが、伊調選手は首をタテに振らなかった。この点では、伊調選手は自分の意思に正直で、周囲の打算に動かされることのない純粋な心の持ち主だといえよう。そして田南部氏の採用は、日体大ほどの組織なら、理事長の一言で中途採用できるものではない。組合の同意が得られず、この話もボツへ。

 松浪理事長は「日体大は練習環境のない伊調選手に練習場所を提供します」とテレビに出演して発表し、悲劇のヒロインを日体大が救ったかにように振る舞い、伊調選手に執着した。しかし、「日体大で練習できるようになったのは、その半年も前のことだった」と多くのレスリング関係者は目撃しており、これはすぐにネタばれした。

 昨年、伊調選手は川井梨紗子選手との世界選手権代表争いに敗れ、川井選手が東京オリンピックの代表権を手にしたことで、松浪理事長の野望は潰えた。前年の秋には前立腺がんのほか、膵臓がんが見つかる。この夏には大腸がんも見つかり、全身への転移も心配される状況。レスリング協会の覇権争いからも完全に降りた状態だ。

蒸し返された8年前の公金問題

 さて、振り上げた拳を下ろさないのが氏だ。福田会長の後任に高田裕司専務理事の昇格が濃厚になるや、反高田人脈を使い、8年以上前の会計問題を持ち出して「高田降ろし」を仕掛けてきた。連覇確実とされたモスクワ五輪のボイコットで泣いて悔しさを訴えた高田氏を覚えている人も多いだろう。

 それが、「週刊新潮」(新潮社/8月27日号)に掲載された、ある告発者による「高田氏の公金横領」である。国の補助金から専任コーチに渡される謝金の一部を2012年まで毎年、高田氏が『公的な強化に使う』といって集めていたが、「キックバック(還流)させた金で妻の東京でのマンション代などに私物化している」といった内容である。告発者はこれを書いて日本オリンピック委員会(JOC)に送ったのだ。だが言い分は証拠もなくて具体性に欠け、あまりにも稚拙。高田氏に名誉毀損で訴えられたら、どうやっても勝てない事案が多い。

RANKING

17:30更新
  • ジャーナリズム
  • ビジネス
  • 総合