「こんなに大変なことだとは思っていませんでした。当初、地元紙の河北新報の8日の朝刊では新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていた七十七銀行の入社式が行われたと大きく報じられていて、ドコモ口座の件は印象に残っていません。だから、ごく限られた範囲の被害なのかと思っていました」

 同様に岡山県庁の関係者も次のように話す。

「中国銀行にも被害が出たことは、ネットニュースで知りました。地元の山陽新聞が朝刊で報じたのは9日です。しかも、そのニュースの主語は『NTTドコモが8日、発表した』という感じで、銀行不祥事という感じではありませんでした。新聞と同じく地方局のニュースでも取り上げられていた記憶はなく、おかしいなとは思っていました」

 全国紙のシェアが低い地方の主要情報源は、地元紙と地方局だ。どれほど全国紙やキー局、ネットニュースなどが報道しても、地元メディアの報道が低調であれば伝わらないことがあり得る。つまり、一番被害者になっている可能性の高い地元の預金者が「情報不足」に陥るということだ。

 また地元紙の経済担当記者の最重要取材先は地銀だ。各都道府県内の主要企業の創業廃業情報、新規事業の展開や全国的な大企業の移転情報など、ありとあらゆる経済情報が地銀に集まっているため、絶対にないがしろにできない存在といえる。

地方銀行、ドコモと地方メディアのズブズブな関係

 地方紙に勤務経験のある全国紙記者は話す。

「銀行担当は地方紙経済担当者の花形部署です。しかし、もし何か銀行の機嫌を損ねるような取材や記事を書いて、つむじを曲げられれば『特落ち』(編注:重要なニュースを自社だけ落とすこと)はもちろん日々のネタにも困るでしょう。

 今回のドコモの一件では、まず新聞記者のIT関連の知識不足が深刻なことがあり、ニュースバリューをはかり損ねた可能性があります。

 ただ共同の初報が社内に設置されているピーコ(編注:共同通信ニュース速報を伝える社内スピーカー)で流れたのは、翌日の朝刊に間に合うタイミングだったはずです。内容的に地元の地銀も関係している可能性を思いいたるのも容易で、ちょっと取材をすれば事の重大さに気が付き、大きく報じることはできたと思います。

 ネットなどで指摘されているように、銀行などから圧力があったとは思いませんが、仮に銀行の広報担当者が『これはドコモさんの問題で、うちの問題ではない』と言ったら特に反論もしないでしょう。また担当記者やデスクのレベルで『被害も大して出ていないし、このネタは書かないほうがいい』と忖度した可能性は高いと思います」

 地方局記者も次のように話す。

「例えばトヨタや任天堂など全国的な大手スポンサー企業は、基本的に電通などの代理店を通じてメディアと広告のやり取りをしています。

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