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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

北朝鮮、朝鮮史上最悪の大飢饉「苦難の行軍」再来に警戒…菅・新政権、経済援助再開か

文=相馬勝/ジャーナリスト
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「わが党と党の革命偉業に限りなく忠実な人民軍がある限り、いかなる自然災害も、災難もわが人民の幸せと笑いを奪うことはできない。私(金氏)の人民のために闘う朝鮮労働党の信念と意志を挫く力はこの世にない」

 これは、最高指導者である金氏自身が被害状況を気にしていることを知らせるパフォーマンスともいえよう。その一方で、金氏は会議では「突然の台風被害でやむを得ず年末闘争課題を全面的に再考し、方向を変更せざるを得ない状況に直面した」と指摘し、経済計画の全面見直しに言及した。金氏は8月に経済の5カ年戦略の未達成を認め、来年1月に党大会を開いて仕切り直す方針を決めたばかりだったが、今回の台風被害でその計画も見直さざるを得なくなった状況に追い込まれたことを意味する。

 今年の10月10日は朝鮮労働党創建75周年の記念日に当たり、大規模な軍事パレードなどの慶祝行事が予定されているが、金氏が明言しているように、内実は祝賀どころでなく、計画自体を見直さざる得ない状況だ。北朝鮮は国際社会による制裁や新型コロナウイルス対応に加えて豪雨や台風に見舞われるなど、金氏は就任以来最大級の危機に直面しているのは間違いない。

 北朝鮮では、金正日総書記の時代の1994年後半から97年にかけて、いわゆる「苦難の行軍」と呼ばれる3年間におよぶ大飢饉が発生し数百万人が餓死したと伝えられる。このような状況が続けば、今後、再び「苦難の行軍」が現実化する可能性も否定できない。

政権の転覆も否定できず

 金氏は中国やロシアからの支援を期待したいところだが、最悪の場合、日本や韓国などの近隣諸国からの経済支援をも拒むことはできないだろう。なぜならば、まだ36歳と若いうえに最高指導者に就任して9年足らずで、祖父や父と違ってカリスマ性や指導力が欠如しており、農民一揆ならぬ市民による暴動が発生すれば、政権の転覆も否定できないからだ。

 本稿を書いている14日午後、菅義偉氏が自民党新総裁に選出され、16日には衆参両院の本会議で行われる首相指名選挙を経て第99代の首相に就任する見通しだ。菅首相を首班とする新政権が発足するだけに、これまでの安倍晋三政権時代の対北チャネルを活用して、新たな対北外交攻勢をかけるチャンスが到来したともいえるのではないか。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

 

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