なぜ、ここまで我慢して、自分を追い込んでしまうのだろうか。1つは、「借りたお金は返さなければいけない」という常識に縛られるのだという。ごく一般的な人生を歩んできた真面目な高齢者ほど、道を外れることに恐怖を覚えるらしい。こうして、食べるものも食べずに、電気・ガス・水道が止まってしまうほど自分の生活を犠牲にしてまで、ローンの支払いを優先する人は少なくない。あるいは、目先のローンを滞納したくないばかりに、自転車操業的にカードキャッシングを繰り返して墓穴を掘るケースもある。

 2つ目の特徴は、持ち家に対する並々ならぬ思い入れだ。

「駅からすごく遠くて、スーパーもなくて、どんなに汚いボロ家でも執着します」

 そんなボロ家のために10万円ものローンを払って、それでも追いつかない。「生活保護の人のほうがよほど裕福なのではないか」と思ってしまうほどすさまじい暮らしぶりなのだという。

「家の中にはほとんど何もなくて生活感がない。昭和の時代に普及したような年代物のポットが置いてあったりします」

「駅のすぐ近くにきれいな5万円のアパートがありますよ」と提案しても、「絶対嫌だ」と言う。それでも、完済できる見込みがあればいいが、とても追いつかない。そんな人に限って、「生活保護を受けるまでには、オレは落ちぶれたくない」と虚勢を張る。

無理のないローン返済と、返済方法の知識を

 住宅ローンに苦しむ人が相談にやってくると、高橋さんは各々のケースに合った解決策を考える。オーバーローン(ローン残高が不動産の時価を上回ること)の場合には一般売却もできないため、最悪の場合には競売にかけられてしまうが、それを防ぐために、最近では任意売却という手法をとられることが増えてきた。

 任意売却とは、不動産コンサルタントが仲介に入り、債権者・債務者の調整を行うことによって、資産価値がローン残高を下回っても売却が可能になる方法のこと。売却価格がかなり安くなる競売と違って市場価格に近い価格で売却できるので、債権者・債務者ともにメリットがある。相談者に任意売却の話をすると、「ああ、そんなことができるのですか。無理して払わなくてもいいのですか」と言って、涙をぽろぽろ流す人もいる。

 前述のAさんも、最初は「賃貸は嫌だ」と自宅に住み続けることにこだわっていたのだが、最終的には任意売却する道を選んだ。その際、肩の荷が下りたのか、いままでの強張った顔つきから、一気にほっと安堵した表情に変わったという。

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