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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

オフィス、無用の長物化&大余剰が現実味…平均賃料2割減も容易に想定

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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 確かに一部の裕福な企業では、そうした対処をするところもありそうだが、多くの企業では、社内の部署ごとにテレワークができる部署、できない部署に分け、社員の多くをシフト勤務にしていくのが、これからの大きな流れになるのではないかと睨んでいる。そう考えるとやはり、多くのオフィスで床が余るという現象は避けられないものになってきそうだ。

1割がテレワークになれば大きな変化

 人々の働き方の形態そのものが今回のコロナ禍を契機に大きく変わる可能性があるというのが、ポスト・コロナにおける大きなターニングポイントなのである。そうした意味では「結局もとに戻る」という意見は、コロナ禍は一過性の感染症にすぎず、働き方そのものには大きな変化は生まれないという前提に立っているということになろう。

 しかし、そう言っている多くの人たちは実は古くから存在する大企業の役員たちだ。組織は大きくなるほど保守的になると言われるが、ポスト・コロナはたいした変化は生じず、「元の世界の戻る」と信じたい気持ちもうなずけなくはないが、ただ実態はどうだろうか。

 オフィスビルマーケットは、これまで実体経済の好不調に約半年遅れて影響を受けるといわれてきた。この伝から行くと、オフィスマーケットに予兆が現れてくるのは20年秋以降ということになる。

 日本総研の予測では、企業従業員の1割がテレワークになった場合、東京都心5区の空室率は15%近くに急上昇し、平均賃料も約2割下落するとしている。たかが1割と思うかもしれないが、現在の空室が2%であっても1割の社員が完全テレワークになれば、その分のオフィス床は不要になる。当然空室率は10%程度は悪化することになる。

高層ビルがステータスであった時代の終焉

 気を付けたいのは、やはり人々のマインドがコロナ前とコロナ後では大きくチェンジしたことにある。これまでのいわば常識であった働き方が実は違うのだ、違ってもよいのだ。通勤なんてしなくても仕事はできたんだ、という気づきをオフィスで働くほぼ全員が「共有化」できたところにある。

 ポスト・コロナ時代において、オフィスはその役割をずいぶん変質させていきそうだ。これまでは全員がひとところに集まって仕事するという組織体が存在し、その存在を内外にアピールするためにオフィスは必要だった。ところが実際にはオフィス床というものが、必ずしも働く場として必要なものではないとわかった瞬間、オフィスの存在意義を問い直されたのがこのコロナ禍だった。

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