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成馬零一「ドラマ探訪記」

小芝風花の『妖怪シェアハウス』は現代の怪談?澪は人間と妖怪のどちらを選ぶのか?

文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家
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土曜ナイトドラマ『妖怪シェアハウス』|テレビ朝日」より

 テレビ朝日系で土曜日夜11時15分から放送されているドラマ『妖怪シェアハウス』が、本日最終回を迎える。

 主人公は24歳の目黒澪(小芝風花)。嫌われることを恐れて空気を読んで生きてきた澪は、付き合っていた奥園健太郎(柾木玲弥)に騙され、お金、仕事、住まいといった財産を奪われてしまう。

 行き場をなくした澪は、荒波八幡神社の境内で意識を失う。そこで看護師の伊和(松本まりか)に助けられ、シェアハウスに泊めてもらうのだが、伊和の正体は、なんと四谷怪談に登場する“お岩さん”。他の住人も、酒呑童子(毎熊克哉)、ぬらりひょん(大倉孝二)、座敷わらし(池谷のぶえ)といった妖怪たちだった。

 澪に同情した妖怪たちはクズ男の健太郎をこらしめ、貢いだ金を取り返した澪は、伊和たちとシェアハウスで暮らすようになる。

恐ろしい人間模様を描いた現代の怪談

 さながら本作は現代の怪談で、自分に自信がなく騙され続けてきた澪が、妖怪たちと暮らしながらオカルト系の出版社で働くことで成長していく姿が描かれる一方、毎回ゲスト妖怪が登場し、妖怪よりも恐ろしい人間社会が描かれる。

 第一怪(回)では澪を食い物にする元カレ、第二怪は妻子持ちのイケメンだが実はパワハラ、セクハラを繰り返しているカリスマ編集者。第三怪が主人公の幼馴染みを騙す結婚詐欺師と、クズ男のエピソードが続く。この三怪はメインライターの西荻弓絵が脚本を担当しており、なるほど、#MeToo運動時代の怪談とは、こういう物語なのだなとよくわかる。

 西荻は『ダブル・キッチン』(TBS系)のようなホームコメディから『ケイゾク』(同)、『SPEC』(同)といった堤幸彦監督のカルトミステリードラマまで幅広く手がける脚本家で、テレビ朝日系では『民王』や『女囚セブン』といったコメディテイストの社会派ドラマを手がけている。どんなドラマを書いても、社会の犠牲となった人間の怨念をすくい上げるというテーマを抱えた脚本家で、その意味でも、『妖怪シェアハウス』のような怪談は相性が良かったと言えるだろう。

 四谷怪談のお岩さんを筆頭とする幽霊や妖怪は、もともと人間社会における犠牲者で、非業の死を遂げたことから怨霊となったものが多い。つまり、本当に恐いのは妖怪よりも彼らを妖怪にした社会の側なのだが、そう考えると、妖怪のビジュアルを現代風にアレンジした突飛なコメディに見える『妖怪シェアハウス』は、怪談の本道だとも言える。

 西荻だけでなく、他の脚本家が手がけた話もおもしろい。ブラジリィー・アン・山田が手がけた第四怪には、コロナ禍に話題となったアマビエ(片桐仁)が登場し、SNSの恐怖を描いていた。妖怪と暮らしていくことをSNSに書いたら注目が集まってしまった澪が、SNSの反応を気にして「いいね」中毒になっていく姿は痛々しく、澪のファンだった男がアンチになってストーカーみたいになる展開も生々しかった。これぞまさしく現代の怪談である。

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