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元慰安婦を“食いもの”にする韓国エリートたち…慰安婦問題を“食い扶持”にし解決を妨害

文=深笛義也/ライター
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韓国・ソウルの日本大使館前で旧日本軍の慰安婦問題解決を求める定例集会「水曜集会」が記者会見の形で開かれた。(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 韓国の与党「共に民主党」の尹美香(ユン・ミヒャン)議員が9月14日、詐欺や業務上横領の罪で在宅起訴された。

 旧日本軍における慰安婦問題を追及する「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)は、2016年に「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)に改称された。尹美香はその理事長であった。韓国検察の発表によれば、元慰安婦の海外渡航費や弔慰金の名目で集めた寄付金を私的流用するなど、合わせて約1億ウォンを横領した疑いが持たれている。

 慰安婦や徴用工など、当事者たちに多く取材し『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)にまとめた、ジャーナリストの赤石晋一郎氏は語る。

「2004年に沈美子(シム・ミジャ)さんら13人の元慰安婦が、貧しい生活をしている元慰安婦に寄付金が渡らず、挺対協が横取りしてしまっているとして、『募金行為及びデモ禁止の仮処分申請』を申し立てる訴訟を起こしたことがありました。その時には、韓国メディアは慰安婦問題で恥部になるようなスキャンダルを書くということは、ほとんどなく、私が日本で書いた訴訟の記事がスクープとなったほどでした。今年の5月7日に元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんが記者会見を開いて、正義連の会計疑惑を訴えてから、そうしたタブーが破られて韓国メディアでも報じられるようになりました」

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『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(赤石晋一郎/小学館新書)

 李容洙氏は日本やアメリカでも慰安婦としての被害体験を語り、2017年に米トランプ大統領が訪韓した際の晩餐会で抱き合ったことも記憶に新しい。慰安婦のシンボル的存在だ。

「李容洙さんの証言にいろいろぶれがあるのですが、元慰安婦の中に不満が鬱積していたことは事実です。それは歴史問題が市民活動家に支配されていることに起因します。寄附金を搾取してたという一現象に象徴されるように、市民活動家が表に立ち、元慰安婦を利用してきたことは大きな問題です。きっかけは文在寅(ムン・ジェイン)と同じく左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の時に、真相糾明委員会が設置されたことにありました。真相糾明委員会には市民活動家が多く参画し、彼らが元慰安婦などの実被害者にとって代わり歴史問題での主たる発言者になりました。盧武鉉は弁護士として政治社会運動に関わっていたし、文在寅は民主化運動に加わった経緯の後に弁護士になっています。日本で言えば、学生運動をやっていた菅直人が総理大臣になったのと似ていて、市民活動家が大統領になっているわけです」

 一市民の思いがダイレクトに伝えられるはずの市民団体が、元慰安婦から訴えられているというのは、きわめて皮肉な現象だ。

「韓国には、現在も両班(ヤンバン)意識というものが残っていると言われています。両班というのは、高麗、李氏朝鮮王朝時代の支配階級です。韓国は日本と比べても格差が大きいし階級意識が強くて、それが両班意識と呼ばれていて、市民団体の中にもそれがあるんです。尹美香自身も梨花女子大学という、日本で言えば、お茶の水女子大学に当たるような大学の大学院まで出ています。そうしたエリートが挺対協の中には多くいて、慰安婦問題を大きく歪めていったのです。

 なぜ実被害者でもないエリートが大きな顔をするのかというと、その大多数が庶民出身である元慰安婦に対する上から目線、両班意識が挺対協の中にはあると言われているのです。挺対協の創設メンバーの金文淑(キム・ムンスク)さんにインタビューしたときに、彼女は挺対協はもともとは純粋な女性人権活動団体だったと言っていました。それが募金目当ての活動にどんどん変容していってしまったと嘆くのです。募金活動を提案したのは尹美香だと言われています。そこから人権活動という方針から大きく舵が切られるようになり、お金のための活動という側面が強くなってきたように見えます」

「日本は謝罪していない」と言い続ける市民活動家たち

 1995年に発足した「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)の時も、2015年の慰安婦問題日韓合意の時も、市民活動家たちは元慰安婦たちに「日本の金は受け取るな」と言ってきたと、『韓国人、韓国を叱る』には書かれている。しかし多くの元慰安婦は支給を受けており、「財団の10億円は日本国民の税金から出たお金だから日本国民にも感謝します」との声も、同書には記されている。市民活動家たちはなぜ、「日本の金は受け取るな」と言うのだろうか。

「端的に言うと、問題が解決すると自分たちの食い扶持がなくなる、ということとしか思えないんですね。元慰安婦たちから言わせると、赤の他人が口出す問題じゃないということです。たとえば交通事故で被害に遭った人が、加害者と示談が成立しているのに、関係ない人が示談金を受け取るなと言ってるのと同じことでしょう。

 アジア女性基金では、日本の歴代首相のお詫びの手紙が配られています。慰安婦合意の時、岸田文雄外相(当時)は記者会見でお詫びの気持ちを表明しています。だけど、市民活動家たちは『日本は謝罪していない』と言い続けています。基本的には解決をさせないということが、彼らの主眼であって、そこに金銭問題が大きく関わってるんじゃないかなという推察はできます」

 集められた募金の使途が不鮮明であることが浮き彫りになってくると、「日本の金は受け取るな」という言葉は極めて奇異に響く。2016年、日韓合意を成した朴槿恵大統領が失墜すると、日韓合意を破棄すべきだという世論も高まった。2017年に大統領になった文在寅は、日韓合意では問題の解決がなされないと声明した。尹美香が起訴されたことは、文政権に影響を与えるのだろうか。

「尹美香は今年の5月、与党『共に民主党』の国会議員になりましたが、それ以前から、文大統領と思想的な同志関係にあったことは間違いないと思うんです。尹美香が起訴されたことは、政権にとっては大きなダメージにはなるでしょう。検察と文政権が対立を続けている状況もあるので、文政権にとって憂慮すべき状況の1つだと思います」

言葉を意図的に一人歩きさせる

 従軍慰安婦については、強制連行の有無が論点となることがある。元旧日本陸軍軍人を自称した吉田清治は、戦中、自ら韓国済州島で200人の女性を人さらいのように連れてきて慰安婦にしたと「告白」する手記を発表。韓国女性たちが拉致されて慰安婦にされたという説は日本政府の見解にも影響を与え、国際世論にも波及した。しかし済州島の住民に聞き取り調査をした『済州日報』は、そうした「慰安婦狩り」は確認できなかったと報道した。吉田自身が慰安婦強制連行は虚偽であったことを認めるに至っている。

「私自身は強制連行を争点とは考えていません。なぜかというと、慰安婦にはさまざまなケースがあったと認識しているからです。少女をさらって慰安婦にしたというケースもゼロではなかったと思います。一方で、貧しい状況の中で、職を求めていったら騙されて慰安婦にされたというケースもあります。両班の娘の代わりに、貧乏人の娘が差し出されたというようなケースもあったようです。当時の日本の遊郭にも多くあったように、親によって身売りさせられたというケースもあったでしょう。強制連行という大雑把で不確実な問題を争点にするよりも、慰安婦問題では個々のヒストリーにこそ目を向け、当時、何が起きていたのかを可能なら日韓両国で検証することのほうがより重要だと思うのです」

 慰安婦を「性奴隷」と呼ぶことが、国際社会でも定着してしまった感がある。

「元慰安婦は、『性奴隷』と言われることには、拒否感を示す方たちが多いですね。もちろん慰安所に兵隊が何人も並んでいて、次々にその相手をするというのは非常に苦痛な状況ではあると思うんです。だけど自由な時間もあって、日本兵の恋人とデートをした慰安婦もいた。それを奴隷と言っていいのか。『Sex slaves』という言葉は、アメリカ人等を怖がらせる言い方として、挺対協が使い始めたそうです。海外で『性奴隷』と聞くと、それはひどいっていうことになりますからね。徴用工についても『奴隷労働』だって言ってますけど、ムチを打って労働させてたわけでもない。日本人も徴用されて働いてたので、日本人も奴隷だったのかという話にもなります。

 何をもって奴隷かという定義にもよると思うんですけど、激しい言葉使いは問題を誇張するという意図が強いように思います。もちろん徴用工は自分から働きに行った人もいる。慰安婦にもそうした人もいます。個人個人のオーラルヒストリーがあって、それぞれの状況は違うので、1つ1つちゃんと検証していかないと、誤った歴史観になってしまうんじゃないかなと思っています。

 元慰安婦の金田きみ子さんは当時、日本兵と付き合っていたんです。彼女から見たら、日本兵も慰安婦も戦争の被害者なんですね。両者とも苦しい。国のためと思ってた人もいたかもしれないけど、そうじゃない人が圧倒的に多い。死ぬ時に『天皇陛下バンザイ!』と言って死ぬ人は誰もいなかった、『お母さんお母さん』って泣きながら死んでいったという話を、金田きみ子さんはしたそうです。

 金田さんは、自分も被害者だけど兵士も同じ被害者だと考えて、なんとか慰安婦問題を解決したいという思いで、アジア女性基金でいの一番にお金を受け取っているんです。戦争を経験したからこそ、対立よりは平和な生活が大事だということを、何回もくり返しおっしゃるんですね。そういうところが、歴史問題では語られるべきではないかと思います」

自国の蛮行には目を背ける韓国

 挺対協が、国際世論にまで影響を与えられたのは、なぜなのだろうか。

「『性奴隷』という言葉を使い出すとか、もともと韓国はPR上手な面があります。それは日本と文化的な違いがあるかもしれません。日本のほうは『性奴隷』を否定しようとして、議員や学者、ジャーナリストらがワシントンポストに意見広告を出したけど、逆にバッシングされる結果になったりして、PRがあまり上手くないですよね。

 今、軍艦島(長崎県・端島)の取材をしているんです。2015年に軍艦島が世界文化遺産に登録される時も韓国は、朝鮮人を強制労働させた、監獄島、地獄島だと言って、ユネスコに行って登録反対の大ロビー活動をしたんですね。そこにウソが混じっていても気にしないというところが、韓国の市民活動家や韓国政府にはあるように見えます。例えば慰安婦問題では『日本は謝罪をしていない』と市民活動家は言います。しかし、前述したように何度も謝罪はしている。それはウソだろう、と日本人が言いたくなるようなことを市民活動家は平気で口にするというところはありますよね」

 韓国では真実を語りにくいという例として、韓国のベトナム参戦がある。そこで行われた事実を『ハンギョレ21』に書いたク・スジョン氏にインタビューした内容も『韓国人、韓国を叱る』には収められている。ベトナムにおいて韓国軍は基地をつくるために、乳幼児を含む数百人の村民を手榴弾や機関銃で殺害したという。

「記事が載った後、ハンギョレ新聞は退役軍人たちに襲撃され、輪転機などを破壊されました。ク・スジョンさんの実家にも脅迫めいた行為があり、彼女自身は韓国に帰れないという状況になりました。一部にはク・スジョンさんを支援する人はいるんですけど、世論のメインにはなかなか上がりません。反日のほうが大きくフォーカスされやすいんですね。

 韓国の市民活動家が日本を批判する際に、『人道主義に反する行為』という言葉がよく使われますけど、韓国もその言葉に値するようなことをやっているのに、そこには目が向けられない。確かに日本には戦争責任はあるでしょう。ク・スジョンさんとも話したんですけど、それを二国間だけで話しているとずっと対立が続くばかりです。もっと国際的な視野で、平和はどういうふうに維持すべきなのかっていうことを語り合っていく必要があると思うんです」

 ベトナム戦争に最も責任のあるアメリカでさえ、ベトナムで行われたことは公に語られ、何本もの映画にもなっている。

「脱北者に対する扱いにも、人道主義の偏りを感じます。脱北して韓国で作家になった、李主成氏にもインタビューしました。彼の最新作『殺人の品格 宿命の沼』はある事実を元に書かれています。2008年2月8日、22人の脱北者が乗ったゴムボートが、韓国海軍に保護されました。22人はその日のうちに板門店から北朝鮮に送り返されました。李氏の取材によれば、その決定をしたのは盧武鉉大統領秘書室長だった、文在寅だというのです。22人は反逆者として、銃によって公開処刑されました。朝鮮半島の統一が唯一最大のタスクだと文大統領は考えてるだろうと思いますけど、そうした北朝鮮の非人道性をどうやって許容していくんでしょうか」

『反日種族主義』

 昨年『反日種族主義』が韓国で刊行され、日本でも翻訳されベストセラーになっている。慰安婦、徴用工、竹島など、日韓に横たわる問題を実証的に掘り下げた著作である。その著者の1人である李宇衍氏のインタビューも『韓国人、韓国を叱る』には収められている。

「李氏は労務問題の専門家で、徴用工問題を研究してきて、その成果を書いています。きっちりデータを元にして、賃金の民族差別はなかったと記しています。私は元徴用工6人に取材しましたが5人は差別なかったと言って、1人だけ金ももらえなかったし虐待もされたと言っていました。おそらく当時の政府としては、差別するような規定はしていなかったけれど、企業によって異なっていたということはあるでしょう。『反日種族主義』の著者らは韓国の多くのメディアからバッシングされ、脅しのメールなどにも晒されていますが、そうしたことは覚悟していたことで、勇気ある出版だったと思います。私自身は『反日種族主義』に書かれたことに、すべて同意するというわけではありませんが、韓国でも1つ1つ現実的に検証していくべきだと考える人たちがいるということを示したと言えるでしょう」

 日本を叱る日本人はあまりにも多いが、韓国を叱る韓国人が現れたことは、日韓関係を考える上で新たな視座を与えてくれるだろう。

【プロフィール】
赤石晋一郎 ジャーナリスト
南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。講談社「FRIDAY」、文藝春秋「週刊文春」記者を経て、ジャーナリストとして独立。
日韓関係、人物ルポ、政治・事件など幅広い分野の記事執筆を行う。Twitter @red0101a

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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