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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

リモートワーク、意外な病気のリスクに…長時間の座業から来る腹痛や腰痛、実は前立腺炎かも

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
リモートワーク、意外な病気のリスクに…長時間の座業から来る腹痛や腰痛、実は前立腺炎かもの画像1
「Getty Images」より

 リモートワークを取り入れる会社が増加し、新しい生活スタイルが定着しつつある日本社会。効率良く仕事ができるとの声がある一方で、体調に異変を感じる人も増えている。その異変とは、腹痛、腰痛、足の痛み、疲労感など「なんとなく体調が悪い」というさまざまな主観的な症状であり、専門的には「不定愁訴」と呼ばれるものである。多くは単なる疲れや風邪としてやり過ごしてしまう不定愁訴だが、男性の場合、実はその原因は「前立腺炎」かもしれない。リモートワークが前立腺炎のリスクになると警告を鳴らす、くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢氏に話を聞いた。

前立腺炎とは

リモートワーク、意外な病気のリスクに…長時間の座業から来る腹痛や腰痛、実は前立腺炎かもの画像2 前立腺は膀胱のすぐ下にあり尿道を取り囲み、精嚢と一緒に精液をつくる役目を果たしている。その真ん中に尿道があり、前立腺は排尿のコントロールにも大きな役割を果たす。加齢と共に前立腺が肥大することは広く知られているが、前立腺炎は若い世代にも多い。

「前立腺炎には、急性と慢性があります。急性は尿道から細菌が前立腺内部に侵入し、激しい炎症を起こします。慢性は会陰部(肛門と睾丸の間の硬い部分)や腹部、足や腰の痛みや違和感が不定期に続きます」(窪田医師)

 細菌性の急性前立腺炎では排尿痛などの症状もあり気付きやすいが、慢性前立腺炎ではその症状が前立腺に起因するものと気付きにくい。

 細菌の侵入による急性前立腺炎は症状も明らかであり、抗菌剤などの使用により治療を行うが、慢性前立腺炎では症状がはっきりしないケースが多い。

「おなかが痛いという理由で泌尿器科を受診する人は少なく、総合科や内科を受診する人が多いようです。症状には波がありますが、痛みが落ち着いてもモヤモヤした感じが続く人がほとんどですね。慢性前立腺炎は完治が難しく、治療は長期戦になるという自覚が重要となります」

 症状を繰り返すため、ドクターショッピングに走る患者やメンタル面に影響を受ける患者も散見されるという。慢性前立腺炎の治療は、症状の緩解と悪化を繰り返すことを理解し、根気強い治療を続けることが重要である。

リモートワークが慢性前立腺炎の引き金に

 慢性前立腺炎を招く原因のひとつが、長時間にわたる座業である。

「自転車に長時間乗っている人や、硬い椅子に座ったまま長時間の作業は、前立腺を圧迫するため前立腺炎を引き起こすリスクとなります」

 座業のほかにも、ストレスや睡眠不足、生活習慣の乱れが原因となる。

「糖質が多い食事は要注意です。糖質は細胞を錆びさせてしまうため、前立腺炎だけでなくさまざまな病気の原因となります」

 さらに、前立腺疾患には下半身の筋肉の衰えが悪影響を及ぼすという。コロナ禍でリモートワークが一般的となる今後、前立腺予防のため取り組んでほしいことがある。

「円座や柔らかい椅子を使用すること。30分以上座業を続けないことが基本です。25分座ったら5分立つ。または最初からスタンディングデスクを使用するのもいい方法です」

 スタンディングデスクで立った状態で仕事をするのは、前立腺炎の防止だけでなく正しい姿勢を保ち、肩こりや首の疲れを防ぎ集中力を高める効果も期待できる。

 合わせて糖質の取りすぎに注意し、規則正しい生活習慣を心がけることも大切だ。また、下半身の筋肉を強化するため、スクワットや毎日の生活で階段を積極的に使うなどしてほしいという。

 新しいワークスタイルに順応することも、withコロナ時代の新生活様式のひとつといえるだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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