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渡瀬基樹の「空港から最寄り駅まで歩いてみた」第12回

花巻空港からJR東北本線・花巻空港駅まで歩いてみた…宮沢賢治の私塾跡で日本文学を思う

文=渡瀬基樹
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花巻空港からJR東北本線・花巻空港駅まで3.8kmを歩いてみた…宮沢賢治ゆかりの私塾跡「賢治先生の家」に立ち寄る

 花巻空港の現在のターミナルビルは、2009年に完成した2代目。1階にチェックインと到着ロビーが、2階に出発ロビーやレストラン、物販店が揃う、地方空港にオーソドックスなつくりだ。県内の食材を使用しているという「レストラン安比高原」がひときわ目を引いた。

 ターミナルビルを出ると、広大な駐車場を抜ける。花巻空港は高台に位置しているため、右手には配送センターや工場、正面には田園風景が広がり、その奥側には北上川が流れる様子が見てとれる。

 アクセス道路を下って左に曲がり、滑走路に沿って北へ向かって歩いて行くと、ただただ芝生が広がる広大な緑の広場が出現した。北側には小高い丘もあり、広場や空港内部、滑走路が一望できた。

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コンパクトに必要な設備が揃っている花巻空港のターミナルビル。まだまだ真新しさを感じるつくりだ。
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「レストラン安比高原」には盛岡冷麺など、地元メニューが並ぶ。カウンター席にはコンセントも完備。
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空港を一望できる多目的広場の丘。広々とした芝生広場は、サッカーができるほどの大きさ。

 さらに滑走路沿いを歩いて行くと、広々としたグラウンドが現れ、その奥に岩手県立花巻農業高等学校が見えてきた。農業高校らしい匂いがほのかに漂うなかをさらに歩いて行くと、「賢治先生の家」という看板を見つけた。

 花巻市の出身である詩人・童話作家の宮沢賢治は、花巻農業高校の前身にあたる花巻農学校の教諭として5年弱、教鞭を執った。退職後に祖父の隠居所として建てられた別宅を改造して、自給自足の生活を始めたのだが、そこで設立したのが「羅須地人(らすちじん)協会」という私塾だった。

 この建物は没後に人手に渡ったのちに移築されたのだが、花巻農業高校が現在地に移転した際に、その敷地内にこの建物がほぼ昔のままのつくりで健在だったという。建物が移築された場所に、たまたま学校も移転したということで、同窓会などが尽力して復元されたようだ。

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花巻農学校を前身とする花巻農業高校。2003年に北上農業高校と統合された。
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花巻農業高校の敷地にある「賢治先生の家」。落ち着いたたたずまいの木造の2階建てだ。

 自由に入れるようなので見学させてもらったが、実に趣のある2階建ての家だ。周辺は日本庭園のように樹木や芝生が綺麗に整備されており、縁側から外を眺めると実に気持ちがいい。火鉢を囲んだ10畳の部屋には、黒板やオルガンがあり、農業の私塾という雰囲気をうかがわせる。

 銅像や花巻農学校精神歌の碑などもあるのだが、宮沢賢治が生きた時代の空気を味わえることが何よりの魅力だ。新花巻駅近くには宮沢賢治記念館や宮沢賢治イーハトーブ館などの施設もあるのだが、当時の生活を知る場所として、この建物も重要な役割を果たしている。

 なお、2020年度中は新型コロナウイルスの影響で閉鎖されているため、見学はできないようだ。見学が再開されても、大人数での見学は許可が必要。学校の施設なので、静かに雰囲気を味わいたい。

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「賢治先生の家」は、内部も無料で見学が可能だ(新型コロナの影響で2020年度は休止)。
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「羅須地人協会」が開かれていた部屋や「風の又三郎のマント」なども展示されている。

 花巻農業高校の先を左に曲がり、滑走路の北端を西へ向かうと、国道4号が現れる。さらに500mほど直進すると、花巻空港駅へと到着した。歩いた距離は3.8km。ほとんどが空港と滑走路の外周だったが、それほど飽きずに歩くことができた。

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