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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

上場するキオクシア(旧東芝メモリ)、明るい未来が描けない…複雑怪奇な株主構成が致命傷

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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東芝とWDの激しい訴訟合戦

 旧東芝メモリは、WD傘下のサンディスクと共同経営により、四日市工場でNANDを製造していた。両者は半分ずつ投資し、製造されたNANDを半分に分配し、その後のビジネスは両者が各々行う、というスタイルを取っていた。

 ところが、WDが、旧東芝メモリが他社の支配下に入ることを極端に嫌ったため、東芝に「旧東芝メモリを売却するのは契約違反」として、数々の訴訟を仕掛けてきた。これに対して、東芝も「名誉毀損」により損害賠償訴訟を提起し、WDに対して四日市工場のNANDのデータへのアクセス権を停止するなど、反撃に転じた(図1)。

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 これらの訴訟合戦は永遠に続くと思われた。しかし、2017年9月28日、ベインキャピタル率いる「日米韓連合」に売却先が決まると、訴訟合戦は終息していった。ただし、WDがなぜ振り上げた拳を下ろす気になったのかは、筆者にはわからなかった。

日米韓(ぐちゃぐちゃ)連合

 筆者が理解している限りでは、2017年9月28日にベインキャピタル率いる「日米韓(ぐちゃぐちゃ)連合」が旧東芝メモリを買収した時の株主構成等は図2の通りである。

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 まず、旧東芝メモリを買収するための特別目的会社「Pangea(パンゲア)」を設立し、そのPangeaが約2.4兆円を東芝に支払って旧東芝メモリの全株式を買い取るというスキームになっている。

 Pangeaには、ベインキャピタルが約2000億円出資、産業革新機構と日本政策投資銀行がそれぞれ約3000億円ずつ出資(ただしWDとの係争中はベインキャピタルが肩代わりする)、Apple、Seagate、Kingston、Dellなど米国IT企業が約4000億円出資、日本の光学ガラスメーカーのHOYAが約270億円出資、韓国のメモリメーカーSK hynixが約4000億円融資、加えて(図には書いていないが)三井住友、みずほ、三菱UFJの銀行団が合計約9000億円を融資することになっている。

 しかし、わけがわからないのは、Pangeaが2.4兆円を東芝に払って旧東芝メモリを傘下に収める際に、東芝本体がPangeaに3505億円出資して46%の議決権を持つことになっていることである。また、議決権を持つのはベインキャピタルの46%、HOYAの9%で、日本が過半の議決権を持つ半面、米国IT企業連合やSK hynixには議決権がないことも筆者には理解ができない。

 そもそも、Pangeaという特別目的会社の名前も、最悪のセンスのネーミングだ。Pangeaとは、2.5億年ほど前にユーラシア、南北アメリカ、アフリカ、インド、オーストラリア、南極などが一つの大陸だったという仮説に基づく、巨大大陸の名称である(図3)。

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 このPangeaはその後、それぞれの大陸に分裂し、現在に至るとされる。ということは、旧東芝メモリを傘下に収めたPangeaも今後、分裂していくと連想されてしまう。後述するが、キオクシアがなかなか投資できないのも、すでにPangeaの中の意思統一ができない証拠の一つであると想像している。

Pangeaはその後どうなったか?

 このような不吉な名前のPangeaによる旧東芝メモリの買収は、2018年6月1日に完了した(2018年6月1日付「EE Times Japan」記事より)。その記者会見で、東芝が発表した旧東芝メモリの株式譲渡の状況を図4に示す。

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 しかし、この株式譲渡は極めて複雑である。以下に、上記「EE Times Japan」記事の解説を転載するが、それを読んでもなお筆者には十分理解できない。

「譲受会社のPangeaには、BainCapitalが2120億円を出資する他、HOYAが270億円、SK hynixが3950億円、米国4社(Apple、Seagate、Kingston Technology、Dell Technologies Capital)が総額4155億円を、直接または間接的に出資。ただ、米国4企業各社は、TMC(筆者注:東芝メモリの略称)の普通株式あるいは議決権を取得する意思はなく、SK hynixについても、今後10年間はPangeaの15%超の議決権を保有することはできないとの取り決めがあり、議決権ベースでのPangeaに対する東芝の出資比率は40.2%となった。またHOYAの議決権ベースでの出資比率は9.9%で、日系企業の出資比率は50%を超えている。なお、東芝が所有する40.2%相当の議決権のうち、33.4%分は、将来的にPangeaへの資本参加を表明している産業革新機構と日本政策投資銀行に対し指図権を付与している」(原文ママ)

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