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たかぎこういち「“イケてる大先輩”が一刀両断」

LVMHとティファニー、世紀の巨額買収から一転、泥沼訴訟合戦…LVMHの“変心”

文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師
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2.コロナ禍と人種差別問題拡大によるLVMH側の揺らぎ

 両社からの発表はないが、今年6月2日にパリにLVMHの経営陣が招集され、ティファニーの最大市場であるアメリカの情勢について協議されたという情報が業界に流れた。コロナ禍による都市ロックダウン、19万人以上という死者数、黒人男性への白人警察官による暴行事件に端を発した人種差別問題の全米への広がりなどもあり、経営陣にはティファニー買収について再考する必要性が認められた。

 前日の6月1日に開催されたティファニー株主総会でも買収の変更について発表されていなかったが、4日、LVMHは公開市場でのティファニー株の購入を否定。これを受けて買収価格の再交渉の噂が囁かれたが、両社間の事前契約では違反行為や買収の中止が起こった際には違約金5億7500万ドルが発生するとの取り決めがなされていた。LVMH側は買収合意を守る判断となったと仏メディアでは伝えられ、6月9日にはティファニーのアレッサンドロ・ポリオーロCEOが買収を肯定するコメントを出した。

 しかし、3カ月後の9月9日、LVMHは突然、ティファニーの大型買収を撤回すると発表。以下を撤回理由にあげた。

・コロナ禍の中で事業運営を誤った

・米国からの報復関税の問題があるために、フランスの欧州・外務大臣より買収完了の時期を2021年1月6日まで延期するよう要請を受けた

 これを受けティファニーは9月9日、LVMHを相手取り、買収契約の履行を求め米デラウェア州裁判所に提訴した。そして翌10日、LVMHもティファニー社と同社経営陣に対してコロナ禍の危機管理対応が適切でなかったとして訴訟を提起する準備を進めているとして、合意の破棄を発表。こうしてMAE条項(買収される側の事業に悪影響が及ぶ重大な問題が起きれば、買い手が取引を中止できるという規定)の該当をめぐり泥沼の訴訟合戦が始まった。

3.ティファニー側に勝算か

 LVMH側の主張は以下のとおり。

・ティファニーの経済状況とコロナ禍の危機管理を調査した結果、2020年上半期の業績と通期予想は大いに失望する内容で、同時期のLVMH傘下のブランドと比較しても明らかに劣っている。

・損失が出ていた時期にも配当金を支給していた。

・ティファニー経営陣の判断は適切でなかったためにMAE条約に該当する。

・ティファニーがLVMHに対して合併契約の履行を求めて提訴したことには正当な理由がなく、訴訟準備に長い時間をかけていたのは明らかで、不誠実な行動で株主に誤解を与えるかたちで伝わったためにLVMHの信頼が傷つけられた

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