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片田珠美「精神科女医のたわごと」

竹内結子さん死去、理由は本人しかわからない、要因は複数の場合も…医師の見解

文=片田珠美/精神科医
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「gettyimages」より

 女優の竹内結子さんが東京都内の自宅で40歳の若さで急死した。自殺の可能性もあることから、警視庁が慎重に調べているという。

 もし自殺だったとすれば、今年1月に第2子を出産しているため、あくまでも一般的な見解だが、精神科医としては産後うつの可能性を考える。産後うつになると、気分が変化しやすく、悲しくなって涙が出たり、イライラしたり、憂うつになったりする。不安や緊張が強くなり、パニック状態に陥ることもある。

 産後うつは、妊娠・出産によるホルモンバランスの急激な変化、そして育児不安によって起こる抑うつ状態で、発生頻度は15~20%と高い。ホルモンバランスの急激な変化は、妊娠・出産した女性すべてに生じる。だから、誰でも産後うつになる可能性があるわけで、軽視してはいけない。

 育児不安という点に関しては、第1子出産後にとくに多いといわれている。竹内さんは2005年6月に歌舞伎俳優の中村獅童さんと結婚し、同年11月に第1子を出産しているので、育児経験がある。だが、前回の育児から15年も経っているし、20代の頃と比べると体力が落ちており、回復も遅いということが、ちゃんと子育てができるのかとか、女優として復帰できるのかという不安をかき立てた可能性も考えられる。

 真面目で責任感の強い人ほど、きちんと子どもを育てなければと思うあまり、育児が思い通りにいかないと、できない自分を責め、「自分はダメだ」と思いやすいものである。

 もう1つ考えられるのは、2019年に再婚した夫で俳優の中林大樹さんが浮気しているのではないかという不安にさいなまれていた可能性である。夫が実際に浮気していたか否かが問題なのではない。そういう不安にさいなまれ、追い詰められた可能性も考えられるということだ。

 なぜかといえば、最初の結婚では前夫の獅童さんの浮気が原因で離婚したからだ。2006年7月に、獅童さんの酒気帯び運転が発覚し、助手席に女性が同乗していたことも明らかになったため、結婚して1年ほどで竹内さんが長男を連れて家を出た。その後、2008年2月に離婚が成立している。

 あくまでも一般論だが、こういう経験をしていると、再婚した夫も同じことをするのではないかという不安にさいなまれやすい。中林さんが5歳年下ということも不安に拍車をかけたかもしれない。

 こうした不安は、自分が手にしている幸福を失うことへの喪失不安につながりやすい。夫婦そろって子どもを連れて都内で食事をするなど、夫婦仲睦まじい光景が何度も目撃されたという報道があるが、幸福であればあるほど、皮肉なことにそれを失うのではないかという喪失不安は強くなる。

 これまで述べてきたことは、あくまでも可能性であり、憶測の域を出ない。結局、自殺の理由は本人にしかわからないことが多い。場合によっては、本人でさえ、なぜ自分が自殺しようとするのか明確にはわからない。自殺を図ったものの、一命をとりとめた自殺未遂者から、「ただ、つらくて苦しかったので、死んだら楽になるのではないかと思った」と聞いたことがある。

 また、1つの原因だけで自殺するわけではなく、複数の要因が積み重なった結果自殺に至る。だから、ここで挙げた以外にいくつもの要因があったと考えられる。もしかしたら、最近、三浦春馬さんの自殺や芦名星さんの死去など芸能人の不幸が相次いでいたことも影響を与えたかもしれない。

 いずれにせよ、痛ましい限りであり、心からご冥福をお祈り申し上げます。

(文=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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