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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

「インバウンド=成長戦略」は虚妄…異常に訪日客が少なかった“先進国”日本の根本的問題

文=加谷珪一/経済評論家
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 わざわざ観光業を振興させ、外国人が落とすお金で経済を回すのは、ギリシャやスペインなど、目立った産業がない国が採用する手法である。日本は本来、技術大国、経済大国なはずであり、観光以外に目立った資源のないギリシャなどとは違うはずだ。そもそも、本格的な成長戦略を実現し、日本経済が順調に成長していれば、何もしなくても、数千万人の訪日客など自動的に獲得できたという現実を忘れてはならない。

 インバウンドを成長戦略として位置付けてしまった段階で、経済成長に対する根本的なボタンの掛け違いがあったと考えてよいだろう。

輸出が直接的にGDPに占める割合は低い

 本来なら、巨大な内需によって成長を実現するという本質的な部分での施策を実施すべきだったが、ビザ緩和など目先の措置で観光への依存度を高めてしまった。結果として、日本人による内需は拡大せず、消費経済は外国人が落とすお金に依存することになった。コロナ危機の発生はまったくの偶然だろうが、外的要因に対する脆弱性という点では、必然の結果だったともいえる。

 こうした掛け違いが発生した最大の理由は、「輸出によって経済を成り立たせる」という昭和時代の思考回路からいまだに脱却できていないことであると筆者は考えている。

 日本のGDP(国内総生産)の6割以上は個人消費であり、日本はすでに輸出ではなく、日本人自身の消費で経済を回す消費主導型経済になっている。確かに昭和の時代までは輸出主導型経済だったかもしれないが、それについても大きな誤解がある。

 かつての日本経済が輸出主導だったといっても、輸出そのものがGDPに占める割合というのは意外と少ない。輸出主導型経済の原動力となるのは、輸出産業が国内で実施する設備投資であり、限りなく内需拡大に近いものである。

 海外からの受注が増えると各社は増産を検討するので、生産設備が増強される。国内に新工場をつくったり、生産ラインを拡充することによって、サービス業を含めあらゆる業界に恩恵が及ぶ。設備投資の増強によって、国内労働者の所得が増え、これが最終的に個人消費を増やすのだ。

 つまり輸出主導型経済というのは、輸出をきっかけとした国内設備投資によって内需を拡大させるメカニズムであって、決して輸出そのもので経済を回すわけではない。

外国に頼らず経済を回す仕組みの構築が必要

 経済の屋台骨である個人消費が動かなければGDPを成長させることはできないので、最終的にはいかに個人消費を拡大させるのかがカギを握る。

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