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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

「インバウンド=成長戦略」は虚妄…異常に訪日客が少なかった“先進国”日本の根本的問題

文=加谷珪一/経済評論家
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 もし輸出産業がドイツのような高付加価値型にシフトし、今でも国内に工場が存在しているのなら、輸出の増加は個人消費の拡大につながるだろう。だが、日本企業の多くはこうしたビジネスモデルの転換を行わず、韓国や中国と価格勝負するという安易な戦略に走り、コスト削減の必要性から多くの工場を海外に移してしまった。

 仮に企業が設備投資を強化するにしても、お金が落ちる先は海外であり、日本人の所得は増えない。企業の業績が拡大しているにもかかわらず、日本人の賃金が伸びず、消費が停滞しているのは、国内にお金が落ちる仕組みが構築されていないからである。

 勘のよい読者の方であれば、インバウンド戦略を実施しても同じ結果になることは容易に想像できるだろう。いくら外国人の消費が増えたからといって、日本の人口の何倍もの人がやってくるわけではない。日本人による消費が減った分を外国人に頼っているだけでは、国内の設備投資は増えない状態が続く。実際、小売店やホテルなど一部の業界を除いて、日本の労働者全体にはお金が落ちず、個人消費の拡大にはつながらなかった。

 政府が行うべきだったのは、なんらかの形で日本人自身にお金を支出させ、個人消費を拡大する施策であった。これが実現できれば、海外とのやり取りも必然的に多くなり、黙っていても外国人観光客は押し寄せてくる。

 フランスは突出した観光大国ではあるが、昔から観光客に対するサービスの悪さは折り紙つきである。それでも観光資源を持ち、経済が豊かであれば、人々は喜んでお金を落としてくれる。日本もまっとうな戦略で諸外国並みの経済成長を実現していれば、社会はもっと豊かになり、今のレベルの観光客数など何の努力もせずに実現できただろう。

 結局のところ経済を動かすのは、自国民による巨大な消費であり、この部分を無視して成長戦略を立案することはあり得ない。こうした基本認識の欠如こそが、日本経済が停滞する真の理由といってよい。

(文=加谷珪一/経済評論家)

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