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ワークマン、驚異的高収益の秘密…社員全員「エクセル」活用のデータ重視経営

文=編集部
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ワークマンプラスの店舗(「Wikipedia」より)

 作業服大手ワークマンの快進撃が続く。

 機能性が高いプライベートブランド(PB)のアウトドア商品が好調で、2021年3月期の単独決算は、売上高が前期比7.3%増の990億円、営業利益は14.0%増の218億円、純利益は16.2%増の155億円。10期連続で最高益を更新する見通しだ。株式時価総額は7423億円(9月25日時点)で小売業の11位。ヤマダ電機、良品計画、マツモトキヨシホールディングス、ローソン、三越伊勢丹ホールディングスを上回る。

 新型コロナウイルスによる外出自粛の長期化はアパレル業界を直撃した。店舗閉鎖に追い込まれるアパレルが続出。かつてない危機的状況のなかで唯一、右肩上がりの成長を持続している企業がワークマンなのだ。

 プロ向けの作業服が中心だったが、一般向けのアウトドア商品も扱う新業態「ワークマンプラス」を始めた18年9月以降、既存店売上高はほとんどの月で前年同月比で1割以上伸びている。緊急事態宣言が発令された4月もプラスを維持し、5月は19.4%、6月は37.2%増と驚異的な伸びを記録した。さすがに8月は10.9%増で7月と比べると、伸び率は鈍化した。前年の8月は空調ファン付きウェアという大ヒット商品があって既存店売上は54.7%も増えた反動で、伸び率の鈍化につながった面もある。

 それでもサマーカーゴパンツやスポーツウェアにも活用できる接触冷感機能のある作業着などが好調で、今年の8月も2ケタ増となった。これで22カ月連続の2ケタ成長である。

【ワークマンの既存店売上高・前年同期比増加率】(単位%)

        4月   5月   6月   7月   8月

既存店売上高  5.7      19.4      37.2      21.4      10.9

女性向け・靴・雨具の専門店に進出

 女性向け・靴・雨具の3種類の専門店の展開に乗り出す。丈夫さや高い撥水機能を高く評価する「ワークマン女子」と呼ばれるファンが増えていることから、女性向け商品を手厚く品揃えした「ワークマンレディーズ」の1号店を10月に横浜市のJR桜木町駅前のショッピングセンターに開く。キャンプで使える火に強いパーカーなどに加え、街中でも着られるワンピースなど品目数は260種類。中心価格帯は780~2900円だ。

 靴の「ワークマンシューズ」は都内で21年3月に開く。スニーカーを中心に40品目を揃え、価格は980円、1900円、2900円の3プライス。ここでも安さを武器にする。反発力が強く走りやすい厚底スニーカーが、半年で8万足を売るヒット商品になったことから、靴の専門店のチェーン化に乗り出す。

 雨具の「ワークマンレイン」は22年3月期中に1号店を開く計画。大雨でもはじく撥水性の高さがワークマンの最大の売りだ。防水防風機能付きウェア、リュックまですっぽり入るレインジャケットや長靴など100品目を予定。中心価格帯は1900円~5800円となる。

大躍進の立役者はマーケティング戦略を担う土屋専務

 マーケティング戦略を担っている土屋哲雄専務が「ワークマンプラス」の快進撃を支えている。東京大学経済学部卒。三井物産に入社。社内ベンチャーで数々の新規事業を立ち上げ、三井物産デジタル社長。2006年に取締役執行役員として入った三井情報開発(現・三井情報)でコンサルティング事業を立ち上げた。

 2012年、親族であった創業者の土屋嘉雄氏(当時会長)から最高情報責任者(CIO)としてワークマンに招かれた。嘉雄氏は流通大手、ベイシアグループ創業者。スーパー大手、ベイシア、家電量販店のベイシア電器、ホームセンターのカインズなどがグループ企業だ。ワークマンは1982年に設立した。

 2020年3月期の高額役員報酬ランキングで嘉雄氏は5億600万円で24位にランクインした。昨年9月、高齢を理由に退任。退職功労金が支払われたことによる。嘉雄氏の長男でカインズの土屋裕雅会長と土屋哲雄専務は従兄弟同士だ。

社員全員が参加するデータ経営

 土屋氏は入社して、ワークマンの実力にびっくりした。作業服というニッチな市場で圧倒的なナンバーワンなのだ。しかし、「この40年間、競争したことがない。競争したら負けると思った」という。だからワークマンは競争しなくていい市場、新たなブルーオーシャン市場を目指すことにした。土屋氏が掲げた目標はデータ経営と客層拡大の2つ。

 データ経営の肝(きも)は、どのような製品を開発し、どれだけ調達して店舗に配置し、どのように販売するかというサプライチェーン・マネージメントの全社員による最適化である。

 ワークマンはフランチャイズチェーン(FC)方式をとり、各店舗は加盟店の店長が運営している。スーパーバイザーはFC本部と加盟店をつなぐ役割で平均10店舗の運営を支援する。本社のデータにアクセスし、受け持ちの店舗の売上が最大化になるよう商品の発注数や陳列数、在庫、配置の最適解を、マイクロソフトの表計算ソフト「エクセル」で計算して店長に提案する。店長は提案を受け入れるだけ。発注の業務から解放される。

 エクセルという簡単なツールを全員が使いこなしてデータ経営ができることが重要で、役員も社員も全員がやらないと意味がない。高度で難しいツールを使ったら全員が使いこなせない。

 データ経営の結果どうなったか。FC店が増えても店舗をデータで管理するワークマンの社員は増えていない。ワークマンは売上高に対する固定費(特に人件費)の比率が年々下がった。ワークマンは「売上高が半減しても営業赤字にならない超効率経営になった」(関係者)。

「ワークマンプラス」が大化け

 客層の拡大策として打ち出したのが「ワークマンプラス」だ。18年9月5日、東京都立川市の「三井ショッピングパークららぽーと立川立飛」に新型店「ワークマンプラス」1号店をオープンした。作業服を中心に扱う既存店と異なり、スポーツやアウトドア系の衣料を専門に扱う。アウトドアブランドの店舗も出店しているが、新型店の中心価格帯は1900~2900円と安く、価格面で特色を出した。

 低価格を売りにしたPB商品が売れたことから、既存店を次々と改装し、「ワークマンプラス」に切り替えていった。8月末時点で全880店のうち216店が「プラス」だ。21年3月期には、「プラス」は既存店の改修などを合わせて283店舗と前期末より108店舗増加する。「プラス」は品揃えの重点や見せ方を変えることで、一般客、特に女性客を呼び込むことに成功した。女性向け・靴・雨具の3種類の専門店の発想も同じだ。分野ごとに特化した店づくりを極める。

 三井物産出身のマーケティングのプロによってワークマンは大変身を遂げた。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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