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藤和彦「日本と世界の先を読む」

新型コロナ、死亡率低下で“治せる病気”に…既存のステロイド薬投与で治療の効果

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員

 米ボストン大学医学部の研究チームは、新型コロナで入院した患者の症状の回復に、ビタミンDの充足度が大きく関連している可能性があることを示す研究結果を発表した(9月29日付Forbes)。血中のビタミンDが充足した状態が、サイトカインストームの発生やその他の合併症を低減させるという。

 症状が悪化したとしても、既存の薬をうまく使えば対処が可能になりつつある。高齢のほか糖尿病、高血圧などの持病がある人が新型コロナウイルスに感染すると、サイトカインストームと呼ばれる免疫の暴走が起きやすくなる。これが重症化をもたらし、ときに死に至るが、サイトカインストームはステロイド薬である程度コントロールすることが可能である。トランプ氏にもデキサメタゾンが処方されたように、リスクファクターが多く治療が困難とされていた人も、ステロイド薬で治療できることがわかってきたのである。

 世界6カ国(米国、カナダ、ブラジル、フランス、スペイン、中国)で実施された試験で、ステロイド薬(デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン)の投与によって死亡リスクが20%低下したことが明らかになっている(9月2日付ロイター)。

 ステロイド薬は安価で入手しやすいことから、最近の国内の大学病院の集計では、重症患者の40%以上にステロイドが使われており、重症度にかかわらず、ステロイド薬を投与する場合もあるという。

 重症化の要因は、サイトカインストームのほかに全身の血管に血栓が生じる血栓症の発生が指摘されているが、血液検査で早期に血栓症を発見すれば、へパリンという既存治療薬で対応できることがわかってきている。

関節リウマチ治療薬「アクテムラ」に期待

 このような状況から、日本の医療現場からは「効果のメカニズムが不明でも治るということが大事である。日本の医療水準は高く、きちんと治療を施せば、新型コロナウイルス感染症は十分克服できる病になった」との声が聞こえ始めている(10月2日付日本経済新聞)。なんとも頼もしい限りである。

 新型コロナウイルスで重症化すると回復したとしても後遺症が残る可能性が高いことから、重症化に歯止めをかける薬が望まれるところである。筆者はかねてより関節リウマチなどの治療薬「アクテムラ」に期待しているが、スイス製薬会社大手ロシュは9月18日、「アクテムラの投与で新型コロナウイルス感染症患者の人工呼吸器装着や死亡に至る危険性が44%低下した」とする臨床試験の結果を発表した。日本をはじめ世界で早期に治療薬として承認されることを願うばかりである。

 感染初期と異なり、新型コロナウイルスは早期に診断を受ければ治る病気となった現在、私たちはこのことを認識して行動することが、新型コロナの感染防止と経済活動の再開を両立させるための最善の策ではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

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