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竹内結子さん急死でフラッシュバック…うつ病で弟を亡くした自死遺族の悲痛な訴え

文=本庄正彦/ライター
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竹内結子さん

 竹内結子さん急死というニュースに触れて、数年前の個人的な記憶が脳裏をよぎり、心臓が高ぶった。

 私自身、かわいい弟の心の病に気づけなかったひとりであり、急死の連絡を受けた直後は気が動転。長い間、大好きな野球も水泳も、酒も競馬も何一つ手につかなくなった。

 この世に生を受けて50年以上が経つが、最も悲しい出来事だった。それだけに、ご遺族の悲しみは察するに余りある。

うつ病と上司の朝令暮改というWショック

 数年前の朝。10歳年下のかわいい弟は自ら死を選んだ。深夜、ビールを飲むと家族に遺言を書き、近所の公園で首を吊ったのである。

 今思えば、半年ほど前からサインは出ていた。それは家族や親族を失って初めてわかるものだが、根が気楽者である私と明るくさわやかな弟だけに、自殺するなど考えもしなかった。

 弟は、愛妻と愛娘を遺してあの世へ旅立った。かわいい盛りの女の子を置いてまで旅立った要因は、うつ病改善のための抗うつ剤服用であり、同時に仕事面で度重なる上司の朝令暮改に振り回されていた。

「眠れないんだよ」――3カ月ぶりに会った弟は不眠症に悩まされていた。眠れない日々が続き、半年もすると体に急速な変調が表れ、全身が痒くなっていた。通院時間が増えて仕事に遅れがちになり、職場の後輩にかける面倒は日に日に増えていった。人一倍責任感が強かった弟を慕っていた後輩の女性は、ショックで仕事が手につかなくなった。

「最近はちょっとしたことするにもパワーが必要でさ、毎日体がダルくて、おまけに痒くて、そんで寝られなくて睡眠不足。本当にしんどい日々でまいってるんだ。なんなんだろうね、いったい。何をしても楽しめていなくてさ、本当に困ってるんだ」

 亡くなる数日前に受け取った、弟からの最期のメールだ。

抗うつ剤服用の前にカウンセリングを

 彼を心配する家族や友人は、いくつかの治療を勧めてくれた。少しでも心境に変化が芽生えればと、私もことあるごとに連絡をした。気分転換をさせようと草野球や飲みの席に誘ったが、弟の返答は「ごめんね。また今度行く」だった。

 一時期、私は仕事で精神薬関係に携わっていた。薬を服用して30分ぐらいすると、脳に変調が起きてくることを自覚しており、抗うつ剤は最後の手段であると感じていた。副作用がキツく、悪循環から抜け出せなくなるのだ。

 週刊誌連載で数多くの基礎的な医療知識を学ばせてくれた、ある有名医師は、私にこう教えてくれた。

「精神安定剤とは、恐怖を感じないよう感受性を鈍くさせると同時に、仕事や日常のパフォーマンスを落とすことになります。気力が衰えて、最悪の場合は依存症にも陥る危険性すらあります。薬を服用する前に、カウンセリングで元気を取り戻すようにするのが基本的な治療法となります。少しでもいいから話をする、明るく楽しい時間をともにすることで、トラウマを少しずつ忘れさせるのです」

 抗うつ剤に原因がある気がして弟の家を訪ねた際、ダイニングテーブルに3~5種類の薬が置かれていた。「こういう薬だけは飲むな」と言ったが、眠れなくて苦しんでいる彼は服用を止めなかった。/p>

 数日後、の家に行った私は、とある民間治療を受けさせた。2時間ほどたって治療が終わった後、食事に誘ったが、「食欲がないんだ」との言葉を聞いて彼と別れた。

 これが最期の対面になるなど、このときは思いもしなかった。

死に至るまでの3日間

 弟が「もうダメだ」と絶望を悟ったのは、梅雨が明けた頃だった。

 職場の先輩から「某省庁に提出する資料を一手に任されていたが、中間管理職の上司が右往左往するため振り回されていた」と聞いた。職場の未来を担う大事な作業を1年ほどかけて進めていたが、金曜日の午前中に突き返され、目の前が真っ暗になったというのだ。

 それがきっかけとなり「心臓がバクバクし始めたんです」と、妻である義妹が涙ながらに語った。休日の土曜日はどうにか過ごせたが、翌日が仕事となる日曜日の深夜。「もうダメだ」と観念したのだろう、家族が寝た後にビールのロング缶を3本飲んだ。死の恐怖を少しでも少なくした上で、走り書きの遺書を記し、月曜日の午前3時頃、あの世へと旅立った。

 遺書には「みんな愛してるよ」と、家族・母・兄弟・友人の名前が書かれていた。数日前から考えていたのか、妻にあてた遺品や遺書には「銀行やローンのカードと暗証番号、生命保険の証券、契約内容を確認するための暗証番号」が細かく記されていた。

 娘たちの未来に対する備えだけは完璧だった。

計り知れない「遺族の精神的ダメージ」

 朝6時。母から知らせを受けた私は、急いで弟の家へ向かった。義妹が号泣しながら私に謝り続けるが、私には彼女を慰めるしか術がなかった。「君は何も悪くない。悪いのは俺だ」と言葉をかけるのが精一杯だった。

 数時間後、私は遺体の確認をした。弟の亡骸を目にすると同時に「どうして気づいてやれなかったのか」という自責の念に襲われ、告別式前夜は浴びるほど酒を飲み、涙が枯れ果てるほど泣き続けた。私のみならず妻、母、兄弟、上司や部下など身近な人間のほとんどが、いまだに自責の念に苛まれている。遺族の精神的ショックは、経験者にしかわからないだろう。

 こうして書くことさえ迷ったが、コロナ禍で増えると言われる「死にたいと思っている人」を少しでも救いたく、記すこととした。

 葬儀当日。私たちが弟にかけた言葉を思い出してみたい。

「ごめんなさい、何もしてあげられなくて」と義妹。

「私より早く死んじゃダメでしょ!」と母。

「もっとお前との時間を増やすべきだった。許してくれ」と私。

「あんないいヤツはいなかった」と多くの友人が号泣してくれたのが、せめてもの救いだった。

※ ※ ※

 最後に。この記事を読んでいただいた、深い悩みを抱えた方にお願いします。

 絶望を抱えていたら、誰にでもいいから話を聞いてもらってください。遺された家族や兄、友人のショックは想像を絶します。どう表現をしていいかわからぬほど、心は深い闇から抜け出せなくなります。

 いくら月日が経過しても、いまだに後悔はなくなりません。家族を愛しているならば、お願いだから悩みを誰かに打ち明けてください。もし話せる人がいなければ、私がお話をお聞きしますので、メールアドレスを記しておきます。時間の許す限り、お話をお聞きします。

 朝の来ない夜などありません。どうか希望を捨てないでください。

(文=本庄正彦/ライター)

メールアドレス:oga4337@yahoo.co.jp

自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口

▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)
0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556
(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応)
岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)

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