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トランプ米大統領、コロナ感染発覚から3日で通常業務再開…すでに側近12人の感染確認

文=相馬勝/ジャーナリスト
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トランプ大統領のツイッターより

 新型コロナウイルスに感染し入院していたアメリカのドナルド・トランプ大統領(74)が5日夕(現地時間)、首都ワシントン近郊のウォルター・リード米軍医療センターを退院し、3日ぶりにホワイトハウスへ戻った。トランプ氏は退院に先立ち、「気分はとてもいい!」などとツイッターに投稿。「すぐに、すぐに選挙戦に戻る!!! フェイクニュースはフェイクな世論調査しか伝えない」と書いて、すぐに選挙戦の体制立て直しに入ることを明言。さらに、世論調査の支持率では民主党の大統領候補、バイデン元副大統領に数ポイント負けているとの結果について「フェイクニュース」と断定するなど、相変わらずの強気姿勢だ。

 とはいえ、医師団の主治医のショーン・コンリー医師は5日午後、トランプ氏は「完全に危機を脱したわけではないかもしれない」と語っており、トランプ氏が職務に戻れば、身近なスタッフや家族に新型コロナウイルスをうつす可能性があること示唆している。このような状態では飛沫感染の危険は高いことは否めない。

 トランプ氏はホワイトハウスに戻った後、1人でバルコニーに登場。親指を立て、敬礼すると、着けていたマスクを外してみせた。このようなトランプ氏の所作を見た記者の1人は「大統領、あなたはスーパー・スプレッダー(きわめて多数の人に2次感染させる感染者)ですか?」などと質問していた。今後、大統領選の最後の追い込みで、動きが活発になり、人気取りのポーズでマスクを外して演説などをすれば、トランプ氏がスーパー・スプレッダーになり、「アメリカで最も危険な男」になることも考えらえるが、そうならないように祈るばかりだ。

トランプ氏がスーパー・スプレッダー化

 コンリー医師は会見で、トランプ氏は退院した後もステロイド剤「デキサメタゾン」や新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」の投与を続けることを認めており、今後もホワイトハウスで治療を続けることを明らかにした。そのうえで、コンリー氏は「24時間休みなしで世界クラスの医療体制が整った住居(ホワイトハウス)に安全に戻れる」と判断したと述べている。

 さらに、コンリー氏は「来週月曜日(12日)までトランプ氏が体調を維持、あるいは改善できれば、ようやく深い安堵のため息をつけるだろう」と指摘し、12日までがトランプ氏の回復のめどになることを明らかにしている。

 一方のトランプ氏は「COVID-19(新型ウイルスによる感染症)を恐れるな。自分たちの生活を支配させてはいけない」などとツイートして、ホワイトハウスでほぼ通常の生活に戻ることになるとの見通しを示した。しかし、現時点でもトランプ氏の側近らの陽性が相次いで判明しており、ホワイトハウス内でクラスター(集団感染)が起きているのはほぼ間違いないとみられている。

 英BBCによると、ホワイトハウスではトランプ氏の側近ら少なくとも12人の陽性が判明しており、9月26日にホワイトハウスの庭や屋内で行われた約200人が参加した最高裁判所判事指名式典が「スーパー・スプレッダー行事」となった可能性があるという。

 式典の出席者でマスクをしている人は少なく、席と席の間は2mのソーシャルディスタンスは守られておらず、握手をしたり、抱擁(ほうよう)を交わし、肩を組んで記念撮影をする人たちもみられた。ホワイトハウスはトランプ氏の陽性が判明して以降、陽性とわかったスタッフの人数を公表していないが、トランプ氏が退院する前の5日には、ケイリー・マケナニー大統領報道官がウイルス検査で陽性とわかっているほか、職員数人の感染が確認されるなど、さらに感染者数は増え続けそうだ。

 トランプ氏は2日未明にツイッターで、自分自身とメラニア夫人が新型コロナウイルスの検査で陽性になったと発表した。実は1日には、トランプ氏に長年仕えている最側近で各地に同行しているホープ・ヒックス氏の感染が明らかになったばかりで、この時点でトランプ氏はニュージャージー州で資金集めのイベントに出席しており、トランプ氏が不特定多数の人々に新型コロナウイルスを感染させた可能性は否定できない。

 さらに、現時点では完治していない状況で、トランプ氏が多数の人々に接触すれば、ホワイトハウス内で新たなクラスターが発生する危険性は高まるばかり。このような米国最高権力者のオフィス兼邸宅であるホワイトハウスで起きている悲劇は、史上例がないといわざるを得ない。この意味でも、トランプ氏は「史上最悪の米大統領の1人」として歴史に名を残すに違いない。

 それを裏付けるように、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は4日、米大統領選に関する世論調査結果として、民主党候補のバイデン元副大統領が共和党候補のトランプ大統領に14ポイントの大差をつけたと報じており、新型コロナ感染者となったトランプ氏の劣勢は覆りそうもないというのが常識的な見方だろう。

 それを横目で見て、ほくそ笑んでいるのは、米国と激しく対立する中国の最高指導者、習近平国家主席であり、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長であるかもしれない。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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