税金でつくった厚労省・献血PR「けんけつちゃん」、“電通が権利所有”で使用できない問題の画像2
厚生労働省「けんけつちゃん」公式サイト。右下に「Copyright 🄫 2008 Ministry of Healtn, Labour and Welfare, All Rights Reserved.(全著作権所有 厚生労働省)」の表記がある

「けんけつちゃん、電通の本家と同じタッチと色で描けませんか」

 まず、指摘されたのがけんけつちゃんの表情でした。イラストではむにが、けんけつちゃんの耳にしがみついているので、けんけつちゃんが驚いた表情をしていました。これに対して、先方は「けんけつちゃんはこの表情をしたことがないので、驚きの顔を描いてよいかどうかを電通に確認しなくてはいけません」「電通と同じ塗り、同じタッチにはできませんか」と指摘してきたのです。

 驚きました。

 すべて指示通りにすれば明らかにシールを張り付けたような統一感のないイラストになってしまうでしょうし、イラストレーターさんも「まったく同じタッチというのは何を指しているのかわからない」と困っていました。そうこうしているうちに、先方から「けんけつちゃんを消してください」と言われたので、絵に謎の空間ができてしまいました。

 謎の空間ができてスカスカだから、「(むにの)首から看板を下げさせてください」と言われ、その通りに仕上げ、最終的に何とかコラボクリアファイルを完成させることができました。

 一連の騒動で疑問に感じたのは、そもそもなんで突然、電通さんがこの件に出てきたのかということです。けんけつちゃんは厚生労働省のホームページに「Copyright 🄫 2008 Ministry of Healtn, Labour and Welfare, All Rights Reserved.(全著作権所有 厚生労働省)」と記載されています。仕様や使用に関して、厚労省にお伺いをたてるのならわかりますが、電通さんにお伺いを立てなければならないのはなぜなのでしょうか?

 もちろん、著作権自体は譲渡できますが、その場合は著作者人格権(こちらは譲渡できません)について「行使をしません」という契約書を結ぶことが一般的です。

 例えば、スマホゲームのシナリオなどは、ほぼ必ず「著作者人格権を行使しません」と書かされますが、これは細部の修正や変更について「僕の作ったキャラはこんなこと言わない」「勝手に改変をされた」などとライターが暴れ出したりすることへの防御の意味合いがあります。大きな金額の絡む制作・運用が一人の乱心で止まってしまうと大変なので。

 では今回、「全著作権所有」されているはずの厚生労働省が電通にお伺いを立てているのは、電通との間で著作者人格権の行使をしない旨を取り決めておらず、行使の可能性があるということなのでしょうか。わけがわかりません。

 一連の作業で、弊社は少なからず時間を割かねばなりませんでしたが、一度白紙になった際の作業やラフイラストのリテイクに関する追加の経費は一切いただいておりません。そうしたことにお金がかかるという発想自体がないのか、最初に稟議を通した金額から変えられないことになっているのかはわかりませんが……。

 ちなみに京まふは終わりましたが、四条・伏見大手筋など京都府内の献血バスではまだクリアファイル配布中とのことです。みなさん、引き続き献血にご協力ください。

権利がどうなっているのか厚生労働省に聞いてみたら…

 一連の激白を受け、当サイトは厚生労働省にけんけつちゃんの権利がどのようになっているのかを聞いた。厚生労働省医薬・生活衛生局血液対策課献血推進係の担当者は以下のように話す。

「電通が権利をもっているので、基本的には無断使用が禁じられているんです。国が公共の利益のために必要がある場合に、知的所有権を無償で許諾することができるようになっています。使用マニュアルに沿って申請して頂き、加えて献血の推進という目的に合致している場合に許可しています。そのため、けんけつちゃんを使用して頂く場合、日本赤十字社さんを含めて、いったん国(厚労省)に申請していただくことになります。

 さらに電通の方にも確認を取っていただき厚労省と電通、どちらもOKとなった時のみ、けんけつちゃんの使用を許可しています。このような仕組みになっているのは、(キャラクター原案の製作者である)電通がいまだに著作権の一部を所持し行使できる契約になっているためです。以前、いったんこちらにすべて受け渡してもらう話もあったのですが、それには多額なお金が必要ということで諦めている状況です」

 補足すると、作者の持つ著作者人格権は譲渡することができないとされている。そのため、通常は多様な展開を図ることができるよう「作者とその代理人の電通が権利を行使しない」という契約を結ぶ。どうやら厚労省は、そうした契約交渉で電通に多額の金銭を要求されたようだ。いずれにせよ現時点で、電通の許可が必要ということは、そうした契約はなされず、けんけつちゃんは「電通の物」であるということだ。

 けんけつちゃんの存在意義は、より広い場面で使われ、多くの国民から愛され、献血運動の推進を図ることのはずだ。もし電通が権利を振りかざして、その活動を阻害しているのなら本末転倒もいいところだろう。

(文=編集部)

 

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