
雑誌掲載の「読者プレゼント」を実はまったく送ってなかったことが発覚し、『クロスワードフレンズ』などのパズル雑誌を発行する中堅出版社・晋遊舎の姿勢が問題視されている。毎日新聞の報道によって明らかになったもので、景品表示法が規定する「有利誤認表示の禁止」に抵触している可能性もあるという。
晋遊舎はこの報道を受け、同社公式サイト上に「弊社パズル雑誌・プレゼントの発送につきまして」との声明を発表。声明によれば、2016年以降に発売された『まちがいさがしフレンズ』など6種の雑誌プレゼントや複数誌にまたがるキャンペーンにおいて、プレゼントが未発送であったことを謝罪。ただし「実際に予定していた発送時期よりお時間が経過」してしまったとのことで、最初から読者を騙すつもりだったのではなく、あくまでも「発送が遅れているだけ」だということを強調しているようにも読める。
今回の問題が起こった要因としては、社内の編集部門と、実際の雑誌製作に当たっていた外部の編集プロダクションとの間で「認識に齟齬」があったこと、社内の担当者が多忙でプレゼント発送にまで手が回らなかったことを挙げ、未発送分に関しては、今後順次発送していくとしている。
男性誌の編集業務にかかわったことのある、中堅出版社のある社員はこう語る。
「晋遊舎というと、“お騒がせ出版社”というイメージが強いですね。もともとはアングラ系のパソコンガイドや成人向けマンガなどを発行していましたが、2005年には、今日まで続く“嫌韓ブーム”をつくったともいわれる『マンガ 嫌韓流』をヒットさせ、しばらくは嫌韓・嫌中本をさかんに発行していました。そうした“危なっかしい”本を出す一方で、無断転載騒動などトラブルも何度か起こしています。ただ2009年頃から、商品やサービスの徹底比較・レビューをウリにした『MONOQLO』や『LDK』などをヒットさせ、近年はある程度普通の出版社になったのかなという印象を持っていました。『MONOQLO』は、一時は発行部数10万部を超える勢いがあったとも」
「プレゼント当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます」の文言で、未発送でもなかなかバレない
さて、一方でこうした「プレゼント未発送」問題は、雑誌業界においてたびたび起こっているのも事実だ。近年の例だけでも、2013年には中堅出版社・秋田書店の女性向けマンガ誌など3誌で読者プレゼント当選者数の水増しが発覚し、消費者庁から再発防止を求める措置命令がくだされている。
2015年には、同じく中堅出版社・竹書房でも、実話系のマンガ雑誌など7誌において秋田書店と同様のプレゼント当選者数の水増しが発覚、同じく消費者庁から措置命令を受けている。
なぜこうした事例は続くのか。パズル雑誌の編集経験がある編集プロダクション社員はこう語る。
「パズル誌やクイズ誌は多くの中堅出版社が発行していますが、以前はこの種の当選者水増し、あるいはもっと悪質な“当選者捏造”とでもいうべき事例は、業界内で横行していたように思います。なぜ横行するのかといえば、豪華なプレゼントがたくさん当たるように見せておけば雑誌の売り上げは上がり、そして実際にはプレゼントを送付しなくても、よほど悪質で長期間にわたって継続していない限りめったに“バレない”からです。
パズル雑誌やクイズ雑誌は多くの問題を掲載しており、その解答を書いてハガキで応募すれば豪華な商品がたくさん当たるように読者にアピールすることが、雑誌の売り上げに直結します。そのため、家電品、ブランドバッグから最近はIT機器までプレゼントは実際非常に豪華であり、しかもそうしたプレゼントが数十名に対して当選すると記載してあるのも珍しくない。
ところが、『プレゼント当選者の発表は商品の発送をもってかえさせていただきます』とのお決まりの文言を入れておけば、仮に誰にもプレゼントを発送していなくても、基本的にはバレませんよね。応募しても当選しなかった読者は、『また今回もハズレたか……』と思うだけですから」