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菅“独裁”政権が狙う日本学術会議の解体…軍事研究や武器輸出を加速、大学にも介入か

構成=編集部
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菅義偉首相(写真:UPI/アフロ)

 日本学術会議が推薦した新会員105人のうち6人の任命を菅義偉首相が拒否した問題が波紋を呼んでいる。政府の対応について「学問の自由の侵害」「日本学術会議法違反」との批判も高まる中、菅首相が推薦者リストを「見ていない」と説明したことで、今後は文書改ざんも論点のひとつとなりそうだ。

「政府にとって、日本学術会議は目の上のたんこぶ。菅政権の狙いは日本学術会議のあり方を変え、軍事研究や軍事産業を発展させることではないか」と語る、弁護士で元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏に話を聞いた。

安倍政権より強権的な菅政権の実態

――今回の任命拒否問題について、どうお考えですか。

宇都宮健児氏(以下、宇都宮) 安倍政権は最高裁判事の任命や東京高検検察長の定年延長など、本来は独立性を保つべき司法権に介入していました。その延長線上として、菅政権は学問の自由にも踏み込んできた印象です。日本学術会議会員の任命に関して、一応は民主主義の体裁を取りつつも介入している現状を見ると、実質的な独裁政権の道を歩んでいると言わざるを得ません。

 菅首相は秋田県出身の苦労人のイメージがありますが、それに騙されてはいけません。一部では「安倍政権が退陣したから憲法改正もなくなった」と安堵する向きがありますが、菅政権で実現する可能性もあります。現政権は前政権の保守路線をさらに推し進める政権であり、より強権的、反動的な政策を行う可能性があります。

――そもそも、任命拒否は日本学術会議法違反との指摘もあります。

宇都宮 日本学術会議法によれば、日本学術会議の推薦に基づき、内閣総理大臣が会員を任命することになっています。従来の解釈では、任命は形式的なものであり、拒否は考えられません。実際、中曽根内閣では丹羽兵助総理府総務長官が「学会の方から推薦をしていただいた者は、拒否はしない、その通りの形だけの任命をしていく」と答弁しています。また、タカ派と言われた中曽根康弘首相も、日本学術会議について「独立性を重んじていくという政府の態度は、いささかも変わるものではございません」と答弁しています。

 一方、2018年の内部文書では、安倍首相が「学術会議の推薦に従う義務はない」との見解を記しているようですが、国会審議なしで方針を変更しているとすれば、とんでもないことです。

――河野太郎行政改革担当大臣は、日本学術会議の予算や機構などについて見直しの検討に入る姿勢を示しています。

宇都宮 私は、この問題は6名の任命拒否では終わらないと考えています。今後は、日本学術会議の変質あるいは解体を狙う動きが出てくるでしょう。政府としては、日本学術会議の活動が目の上のたんこぶのようになっているわけです。

 第二次世界大戦時に「科学が戦争に協力した」という反省のもとで1949年に設立された日本学術会議は、内閣府の「特別の機関」という位置づけですが、基本的には政府から独立した組織です。50年には「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意の表明」、67年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発表しており、2017年にはこの2つを継承する声明を出しています。政府としては、一連の声明に対してカチンときているのではないでしょうか。

――菅政権には、科学者を戦争に協力させたい意向があるということでしょうか。

宇都宮 2016年に施行された安保法制により、集団的自衛権の行使が認められ、海外でアメリカとともに戦争する体制が整えられました。この延長線上の動きとして、軍事研究や、武器の開発・輸出を行う軍事産業を発展させたい意向があるのではないでしょうか。そのため、6名の任命拒否は端緒にすぎず、その先には、日本学術会議の廃止や解体、日本学術会議法の変更といった狙いがあるのだと思います。

 また、今後は政府が大学の運営に口を出すこともあり得ます。大学に軍事研究を行わせ、従わない大学に対しては予算を削るなどの圧力を強めていくといった手段が考えられますが、いわば大学の学問にも国家的意思を反映させようという動きです。

――戦前にも滝川事件や天皇機関説事件など、自由主義思想の学者が弾圧されたケースがありました。

宇都宮 学問の自由が侵害された過去のケースなどは、大いに教訓とすべきです。戦前は、表立って政府の批判ができなかったり、批判すると大学から追放されてしまったりする状況でした。そのため、学問の自由に対して政府の介入を許さない姿勢を示し、声を上げていくことは、日本の民主主義にとってとても大切なことだと思います。

(構成=編集部)

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