最大の理由は、ドラッグストア業界が業界再編の渦中にあることだ。業界4位のマツモトキヨシホールディングス(HD)と7位のココカラファインが21年10月に経営統合する。単純合算で売上高1兆円、全国に約3000店を展開する業界最大手となる。ウエルシアHDとツルハHDは首位を激しく争ってきたが、マツモトキヨシHDが一気に抜き去る。ウエルシアHD、ツルハHDとも巻き返しに出る。そうなれば業界再編は必至だ。

 キリン堂は調剤薬局や医薬品に強い医薬強化型のドラッグストアだ。M&Aの標的になりやすい。キリン堂がMBOによって非上場化するのは敵対的買収を阻止するためとみられている。株式を非公開にしてガードを固め、その次にはベインのネットワークを活用して他業種との買収・協業を進めるという隠された狙いがある。

株価に左右されないで経営ができる

 MBOはマネジメント・バイアウトの略称。経営者や従業員が所属する企業や部門を買収する。経営者は買収できるほどの資金的余裕がない場合、投資ファンドと組んだり金融機関から借り入れる。上場廃止になれば、経営者は株価に左右されず、自由度の高い経営を行うことができるとされる。上場会社は短期的業績によって経営手腕が問われることが多い。

 直近では、介護大手のニチイ学館のMBOが成立、近く上場廃止となる。ホテル・不動産のユニゾHDは国内初の従業員による買収(EBO)によって、6月に上場廃止となった。過去の主なMBOとしてはアパレル大手のワールド、ファミリーレストランのすかいらーく(現すかいらーくHD)、書店のカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)などがある。すかいらーくHDやワールドは上場廃止後、経営の合理化などを進め再上場を果たした。

 MBOは特定の大株主に有利に働くとの懸念がある。支配株主が、少数株主が持つ株式の全部を、その少数株主の承諾を得ることなく強制的に取得するスクイーズ・アウト(少数株主排除)ができるからだ。

 2019年6月、経済産業省は「公正なM&Aの在り方に関する指針」を公表した。株式市場では、孫正義会長兼社長が率いるソフトバンクグループのMBO観測が駆けめぐる。“孫氏の商法”の一章に、MBOによる上場廃止が書き加えられることになるのだろうか。

(文=編集部)

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