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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

モーツァルトで“脳内麻薬”が増える?幸福感を得られ、集中力が高まり作業効率も上がる

文=篠崎靖男/指揮者
【完了・17日掲載希望】モーツァルトで脳内麻薬が増える?幸福感を得られ、集中力が高まり作業効率も上がるの画像1
「Getty Images」より

 最近、興味深い本を読む機会がありました。それは、芸術などの美しいものに感動した時、脳内がどうなっているのかという内容です。

 人間は、コンサートで演奏を聴いて感動したり、素晴らしい絵画を鑑賞している時に、眉間の上あたりにある脳の部位、内側眼窩前頭皮質が活発に活動することが、MRI検査でわかるそうです。半面、良くない演奏や醜い絵画の場合は、まったく活動をみせないか、みせたとしてもちょっぴりだそうで、なかなか厳しい芸術評論家のような部位が脳内にあるわけです。この部位は美しい景色や建築物にも反応するそうですが、快楽や報酬動機に関係するドーパミンに関連する脳内機構の一部ということで、ますます驚きました。

 ちなみに、アルコールを飲むと快く感じるのもドーパミンの影響です。麻薬や覚せい剤も、ドーパミンを活発化し快楽をもたらすことにより、依存症を引き起こしてしまいます。脳の中枢から分泌されるドーパミンは、このような作用から「脳内麻薬」と呼ばれることがあるそうです。

 厚生労働省の解説によるとドーパミンとは、「神経伝達物質のひとつで、快く感じる原因となる脳内報酬系の活性化において中心的な役割を果たしている」とあります。簡単にいえば、快楽や幸福感をつかさどる脳内物質のひとつです。物事に対する意欲をつくったり、運動にも関連性があるそうで、運動障害がでるパーキンソン病も、ドーパミン不足により引き起こされるそうです。

 このような作用があるために、ドーパミンは「生きる意欲をつくるホルモン」とも称されます。ドーパミンが大量に分泌するのは、「意欲が出ているとき」「褒められて気分が良いとき」「成功体験を得たとき」「音楽や絵のような美を鑑賞して感動しているとき」などが挙げられます。しかし、そんなにしょっちゅう、勝手に意欲が湧き出したり、他人に褒められたり、成功体験が得られるわけではありません。そこで、コンサートや展覧会に来ていただければ、手っ取り早くドーパミンの分泌を促進できます。

 ほかにも、たとえば音楽を聴く、絵画を鑑賞する、ふと空を見上げた時に見た美しい秋の月に感動する、村上春樹の本を夢中になって読む……。そんな時間には、ネガティブなことを忘れているのではないでしょうか。実は、快楽や幸福感の内側眼窩前頭皮質が活発化している時は、嫌悪や痛みに関係している脳内の島皮質も活動は抑制されているそうです。人間が生きる上で、なぜ美が必要なのかがよくわかります。