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藤和彦「日本と世界の先を読む」

リーマンショックとも違う“未経験の世界的金融危機”の懸念…国・中央銀行も対応困難

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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 不動産バブルといえば、中国である。9月28日付コラムで中国第2位の不動産開発会社の恒大集団が危機に陥っていることを述べたが、その後も財務不安の状態が収まるどころか高まるばかりである。一部の大口債権者が投融資を減らす一方で、同社が株式売却で調達できた資金は5.6億ドルと目標額の半分にとどまった。

 中国政府は10月14日、米国の機関投資家に対して初めてドル建て国債を売却した(調達規模は60億ドル)ことがわかった(10月14日付ロイター)。中国企業のドル建て社債のデフォルトが急増するなど、中国国内での「ドル不足」がその背景にあるだろう。

 さらなるドル不足の懸念が浮上している。米国務省は10月14日、「米国の香港自治法に基づき、香港の自治侵害などを理由に米国の制裁対象となっている行政長官など10人と大規模な取引を行っている金融機関を60日以内に特定する」ことを明らかにした。
中国の4大国有銀行が制裁の対象となれば、これらの銀行が保有するドル資金は凍結されることになるが、その額が1兆1000億ドルに上る。

経済規模が元の水準に戻るシナリオは描けない

 コロナショックに類似するような前例が過去に存在しないことにも留意すべきである。サマーズ元財務長官は、米医学誌電子版に10月12日に掲載された論文で「新型コロナウイルスが米国に与える経済的打撃は、失われた命や健康への直接的影響まで考慮すれば、16兆ドルに達する」との見方を示した(10月13日付ブルームバーグ)。

 16兆ドルという規模はリーマンショック後のコストの4倍であり、米国のGDPの約90%に相当する。01年9月の米同時多発テロ事件以降に米国がアフガニスタン、イラク、シリアなどで投じた戦費の2倍以上に匹敵する。16兆ドルの半分は、経済活動の停止などによるものだが、残り半分が健康被害に起因するものだと説明している。米国政府は急性疾患治療への支出を優先しているが、公衆衛生サービス全般を改善しなければ、どんなに財政・金融政策を繰り出しても、経済規模が元の水準に戻るシナリオは描けないのではないだろうか。

 現時点では危機の兆しは見えないものの、金融システムに対して負荷がかかり続ける状態が続けば、金融危機の発生への不安から企業心理が悪化する。企業心理が悪化すれば、金融システムへの負荷がさらにかかる。このように、金融機関がじわじわと増加するデフォルトを懸念し始めたら、中央銀行がどのような手段を講じたとしても、信用収縮を防ぐことはできないだろう。

 リーマンショックとは別のかたちの金融危機が起きるのは、時間の問題なのかもしれない。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)

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