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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

大注目の「HSP」、芸能人もこぞって言及…ファッション化を精神科医が危惧

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

HSP(Highly Sensitive Person)」が話題になっている。HSPとは、米心理学者のエレイン・アーロン博士によって提唱された概念で、「刺激に対して非常に敏感で、繊細な気質を持って生まれた人」という意味である。

 複数のメディアで取り上げられたこともあり、芸能人たちもこぞって自身が「HSPに該当する/まったく該当しない」などとSNS上で言及したり、HSPを擁護するような発信をしている。しかし、HSPの実態はあいまいであり、現状では都合よく解釈されているようにも感じる。

 複数のメンタルクリニックがHPなどで「感覚が敏感なHSPの人には温かく見守り、話を聴いてあげる」といった対策が必要だと呼びかけているが、メディアド代表取締役で精神科医の高木希奈医師は、この状況に異を唱える。

HSPは病名ではない

「実は、HSPというのは正式な精神医学的病名ではありません。ですから、精神科の臨床場面では、これが話題になることはほとんどありません。また臨床に従事している精神科医の間で、HSPの概念や対処法などについて議論されることもないので、おそらくほとんどの臨床医は把握していないと思われます」(高木医師)

 HSPは病名ではないと高木医師が明言しているが、一方で同じ精神科医でもまったく違った見解もみられる。10月5日には「HSP」がツイッター上でトレンド入りしていたが、その際、ニュースサイトで発信された記事には精神科医の見解として、次のように紹介されている。

<HSPによりストレスをためてしまうと、うつ病や不安症などの精神症状、慢性疲労症候群や過敏性腸症候群などの慢性疲労状態、自律神経失調症状などが表れやすくなります>

 また、自分を追い込まないよう、感謝や愛着、尊敬や共感などをセルフトークすることでストレスを和らげることができ、さらには「就学や就業が困難になっても無理をせず休むことも大切」と述べている。

 確かに、ストレスを抱えこむことは健康を損なう原因ともなるため無理は禁物だ。しかし、「HSPだから」と口にする人が増えれば、逆に生きづらさを産む可能性も否定できない。

ファッション化するHSP

「精神科医として危惧していることは、いわゆる世間一般的に使われる、俗に言う『メンヘラ』のように簡単に使われるようになったり、言葉だけが独り歩きしてしまってファッション的に使われてしまうのは危険です」(同)

「メンヘラ」とは、心の健康という意味の「メンタルヘルス」がネット上で「メンヘル」と略され、語尾に「er」をつけて人物を指すようになったが、特に恋愛において相手に依存性が高く、感情の起伏が激しい女性を表す言葉として、どちらかといえばネガティブな意味合いで使用されている。

「最近では割と芸能人が『私もHSP』などと公言していますが、影響力の強い方々がHSPという言葉を気軽に使われることで、似たような傾向を感じる方々が『自分は病気なんだ』といったイメージを持ってしまうことを、精神科医としては大変危惧しています」(同)

 自分をHSPに当てはめることで、ネガティブな感情が増大する可能性もあるだろう。誰にでも気持ちの上下があり、気分の良い日もあれば悪い日もある。そういった変化が人生であり生きているということではないだろうか。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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