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木下隆之「クルマ激辛定食」

BMWが歴史的な大転換、“魂を売る”1シリーズのFF化…「M135i」に試乗して驚愕

文=木下隆之/レーシングドライバー
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BMW「M135i」

 BMWM135i」の最大の特徴は、FF駆動がベースにあることだ。それがBMWの歴史にどう作用するのか――。ちょっと大袈裟にいえば、そういうことである。

 核となる1シリーズのFF化はつまり、これまでBMWが頑固一徹に強くこだわってきたFR駆動との決別である。新たにFF横置きエンジンのプラットフォームを採用することは、走りの爽快感を追い求めてきたBMWにとって大英断だったに違いない。

“宗旨替え”と横目で見られる覚悟があったのだと思う。「駆け抜ける歓び」を社是のように掲げ、前後重量配分「50:50」を理想としてきたBMWが、前輪を駆動し、ややフロントヘビーの重量配分を甘んじて認めることにしたのは、魂を売るに等しい。それでもFF化に舵を切ったのは、基本性能を熟成することでBMWらしい走りの味を得られると判断したからなのだろう。そう思いたい。

 今回、コロナ禍の規制を縫ってM135iをドライブすることにしたのは、FF化したBMWに「駆け抜ける歓び」が残されているかを検証するためである。

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 結論から言えば、BMWはFFベースのプラットフォームを採用することになっても、走りの楽しいモデルでいてくれたことを嬉しく思う。直列4気筒2リッタータボエンジンを搭載。最高出力は306ps、最大トルク450Nmを絞り出す。コンパクトハッチバックにしては十分すぎるパワーである。低回転域ではややレスポンス遅れがあるものの、それは本格的にターボ過給が開始されたときのためのようなもの。回転計の針が上昇すれば、ドカンと前輪をかきむしりそうな加速を見舞うのだ。

 だが、それでも前輪がギャっと鳴くことはない。というのもM135iは、「xDRIVE」であるからだ。4輪駆動なのである。450Nmのターボパワーを叩きつけたところで、前後225/40R18インチの太いタイヤはスキッドする気配はない。4輪がものの見事にパワーを受け止める。それよりも心配なのはドライバーのほうで、身構えていないと首筋がグラっとする。それほど鋭い加速なのである。

 しかもxDRIVEは、最大で前後「100:0」~「50:50」の範囲で前後駆動配分をする。激しいコーナリングに挑むと、リアタイヤが駆動する感覚が残る。コーナリング中にFF特有のアンダーステアに陥りそうになると、内輪のブレーキをチョンチョンとつまむ。ノーズがアウト側のガードレースに吸い寄せられるその瞬間に、フロントを引き戻すのである。

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 リアにはトルセンLSDが組み込まれており、旋回フィールを強調させもする。完全なFRにはならないものの、後輪駆動風の挙動になる場面があったのも事実である。

 プラットフォームは、同門のMINIジョンクーパーワークスからの流用であるにもかかわらず、FFの悪癖のひとつである旋回しづらさを見事に払拭させることに成功している。

 そもそも、ドライビングポジションがFR風である。アクセルやブレーキのペダルを上から踏み潰すようなアップライトな姿勢ではない。低い着座点から前に足を伸ばし、足先で挙動コントロールしやすいポジションが得られる。テールハッピーな挙動に陥らないという点では絶対的にはFFなのだが、その領域まで踏み込まなければFR風の自然なドライビングが楽しめるのだ。

 M135iはFFベースの4WDである。FRでは絶対にない。だが、それでもBMWが思想とする「駆け抜ける歓び」には一点の曇りもない。もはや、FFだFRだとこだわることが無意味に感じるほど、走りの楽しさが充満しているのだ。

 M135iは、凡庸なハッチバックなどではまったくなかった。熱い走りの情熱が秘められたスポーティモデルであることに疑いはない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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