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世界の大手IT企業の競争も左右…信越化学工業とは何者なのか?日本経済の星

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 成長期待の高い素材関連企業の存在は、日本経済がDXの加速化という世界経済の環境変化に対応しつつ成長を目指すために重要だ。なぜなら、日本には米国のグーグルやアマゾン、中国のアリババやテンセントなどの大手ITプラットフォーマーに比肩するIT先端企業が見当たらないからだ。

 その一方で、データ送受信のスピード向上と容量の増大を可能にする5G通信の普及などによって、より高性能の半導体需要は高まるだろう。信越化学はそうした需要を取り込み、日本経済の成長を支える重要な有力企業の代表格に位置づけられる。なお、世界的なIT関連企業の株価上昇に関しては、世界的な低金利環境の継続が見込まれるなかで、IT先端企業の高い成長を過信する投資家が短期目線で関連銘柄を買い、株価上昇の勢いが押し上げられていることも忘れてはならない。

台湾での生産能力引き上げの背景

 信越化学はフォトレジスト(感光材)の生産能力を国内で2割、台湾で5割引き上げる模様だ。注目したいのが台湾でのEUV(極端紫外線)に対応した感光材の生産能力の引き上げだ。

 その背景の一つとして、スマートフォン向けを中心に世界の半導体需要が高まるとの期待がある。現在、世界のスマートフォン市場のシェア構造は大きく変化し始めた。特に9月15日に米商務省が制裁を発動した結果、中国ファーウェイのスマートフォン事業は苦境に陥った。同社は低価格帯のスマートフォンブランドである「オナー」事業の売却を目指しているようだ。ファーウェイがスマートフォン事業から撤退するのではないかと考える世界の主要投資家も増えている。

 ファーウェイの苦境は、韓国のサムスン電子、米アップル、中国シャオミにとってシェア拡大を目指す絶好のチャンスだ。7~9月期の決算でサムスン電子はファーウェイのスマホシェアを取り込んで増益につなげた。また、米アップルは5G対応版のiPhone12を発表し、シェア獲得を目指している。国境をめぐって中国とインドの関係が冷え込んでいる。その状況は両社がインド市場でのシェア獲得を目指すためにも重要だ。中国のシャオミは欧州市場を中心にシェアを獲得し、スマートフォンの生産計画を積み増している。低価格機種を中心に強みを発揮してきた中国のオッポも増産を進めている。

 もう一つの要因は、スマートフォンの増産などによって半導体受託製造大手である台湾のTSMCの供給能力の重要性が高まったことだ。微細化技術を用いた生産ラインの確立でTSMCは世界をリードし、売り上げは増えている。同社にとって重要なことは、需要拡大に対応しつつ、生産ラインの安定稼働を実現することだ。昨年、TSMCでは感光材の品質不良から5億ドル(525億円程度)の損失が発生したが、同じ展開は許されない。

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