
大手ユーチューバー事務所・VAZの代表取締役である森泰輝氏が、退任すると発表した。さらに、所有する全株式を共同ピーアール社長の谷鉄也氏に譲渡し、谷氏がVAZの代表取締役を担うことも発表した。
VAZは人気ユーチューバーを多く抱え、UUUMと並ぶ業界大手と呼ばれる事務所になった。かつてはヒカルやラファエルといったトップクラスのユーチューバーも所属していたが、2017年の“VALU騒動”でケチが付いた。
ここ数年は、スカイピース、まあたそ、禁断ボーイズ、かす、ゆん、といった登録者数が100万人を超える人気ユーチューバーが続々と退所し、なかには表立って経営陣を批判するユーチューバーも出てきた。特に最近は、ねおが報酬をめぐって事務所を批判し、不可解な契約なども公表。さらに退所を通告したものの、事務所側は契約解除を認めないと反論して泥沼化の様相を呈する事態になっている。
ヒカルはねおを支持しつつ、VAZの経営陣や森氏を「嫌い」「クソ」などとこき下ろした。加えて、自身がVAZと揉めた過去のトラブルなども明かし、いかにVAZの経営体制が歪んでいるかを暴露している。
他方、VAZ所属のジュキヤとせりしゅんが、ジュキヤのサブチャンネルでVAZを「ゴミ事務所」と酷評。人気ユーチューバーが相次いで退所していることから、ジュキヤが自分も退所を考えていると相談したところ、企業案件を紹介するなどして慰留されたという。しかし、それから4~5カ月たっても1件も案件が持ち込まれないと怒りをあらわにした。
VAZは8月31日に港区青山から中央区日本橋浜町に本社を移転。日本橋浜町も地価の高いエリアではあるが、青山と比べれば雲泥の差がある。しかも事務所の規模も縮小していることから、ジュキヤは「落ちぶれた」と表現しているが、的を射ているのかもしれない。
「UUUMも人気ユーチューバーの退所が相次いでいますが、VAZとはやや状況が違います。UUUMの場合、各ユーチューバーのYouTube動画の広告益から20%を徴収するものが収益の柱となっており、その“20%”を嫌ったユーチューバーの退所が多いようです。一方、VAZの場合は経営陣とのトラブルが目立ちます。VAZに所属し続けているユーチューバーに聞いても、『事務所の人たちは嫌いではないけれど、所属しているメリットも感じない』『仲の良い社員さんがいるわけでもないし、特に愛着はない』といった声も少なくないので、ユーチューバーと事務所の関係が希薄であることがうかがえます」(芸能記者)
森氏は退任に際し、ツイッターで「2015年に創業したVAZの代表取締役を退任します。僕の力が及ばずこのような結果になってしまい、投資家の皆様、そして応援してくださった皆様に申し訳ない気持ちでいっぱいです。今日までお力添えをいただいた方々に深く感謝します」とコメントを発している。
相次ぐユーチューバーの退所や騒動などを念頭に置いた挨拶とみられるが、退任を決めた直接的な原因はコロナ禍による急速な広告収入の減少であると説明している。企業からの広告出稿やタイアップ案件の中止が相次ぎ、事業の継続が難しくなる可能性が出てきたことが決め手になったという。
確かに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、一時は各企業が広報活動を控え、YouTube上でも広告が激減した。だが、少しずつではあるが、企業活動は持ち直しの傾向を見せており、広告も増えつつある。社長交代を経て、VAZは輝きを取り戻すことはできるのだろうか。
(文=編集部)