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時事通信の凋落、21期連続赤字…「コロナ禍でカラオケ」社長は社内の“問題児”だった

文=編集部
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時事通信ビル(「Wikipedia」より/Lombroso)

「世間に自粛を呼び掛ける記事を配信している報道機関トップがコロナ禍でカラオケなんて、ありえないですよ」

 コロナ禍にもかかわらず、10月2日に社員10人以上とカラオケに行ったとして、時事通信境克彦社長が11月分の社長報酬一部返還の社内処分が下されたことについて、時事通信社員はこう嘆く。この一件は「文春オンライン」と「デイリー新潮」で報じられ、報道関係者の間では「さすがに自覚がなさすぎる」と批判の声も高まった。

 境社長は1985年に時事通信社に入社し、経済部長などを経て2017年6月に編集局長、18年6月に取締役を経て、今年6月に社長に就任したばかりだった。時事通信社内では「話してみると普通の人だが、公式の場になると急に極端な意見を出して周囲を困らせることが多い」との評判だ。ある中堅社員はこう話す。

「例えば、編集局長時代には『訂正撲滅運動』と称して、社内サイトに『訂正とお詫び報告書』なる『さらし台』が設置され、ミスをした記者の所属年次などを周知させるという圧政を敷きました。その結果、どうしても数字や選手名などの固有名詞が多くなる運動部などに過度なプレッシャーを与えてしまい、チェックに必要以上の時間がかかって配信が遅れるなどマイナスの効果しかなかった。みんな嫌気がさしていたため、境社長が編集局長を離れた19年7月以降はまったく『報告書』は更新されなくなり完全放置の状態です」

 これ以外にも、今年7月の社長訓示では「社内の会議や文書で自分たちの組織を『弊社』、つまりポンコツ会社と呼ぶ人は日本語の勉強をやり直してほしい」と発言し、事務作業の現場を困らせたほか、「ボトムアップ型のやり方では上司の抵抗やサボタージュに遭って挫折しかねません。私はやり方を変える推進役として先頭に立つ覚悟です。今さらやり方を変えたくないという人の気持ちはわかりますが、邪魔だけはしないようお願いします」と、⾃分の改⾰に逆らう「守旧勢⼒」には容赦しない姿勢が強調した。

 今回の境社長の処分が週刊誌にリークされたことについて、時事通信社内では部署間対立が背景にあると見る向きもある。ベテラン社員はこう解説する。

「境社長は取締役に就任してからたった2年で社長にスピード出世した。境氏は社内の経済部閥のドンのため、次の社長の最有力候補だった役員の出身母体である政治部が率先してリークしたとみられています。境⽒以前は2代続いて政治部出⾝の社⻑が続いていただけに、政治部上層部でやっかみも強かった。そのなかでの境⽒の⾃爆を利⽤する勢⼒があったとしても不思議ではありません」

21期赤字が続く「電通株頼みの会社」

 境氏は今年7月の社長訓示で「最大のリスクは変わらないこと」とのスローガンを掲げ、「DX改革」などを進める方針だ。時事通信は2020年3月期まで21期連続で営業損失を続けており、主要株主となっている電通の保有株を切り崩している苦境にある。電通のホームページによると、19年末時点で時事通信の保有率は5.84%と4位。20年10月30日時点の電通株の時価総額は8626億3400万円のため、単純計算では503億7500万円の「貯金」があることになる。ただ、先のベテラン社員によると「銀行担保に取られている株の割合も多く、まったく安心はできない」という。

 競合他社の共同通信も加盟社の新聞社の経営不振で、今年6月に28年度までに正社員を1600人から1300人に削減することを発表したばかり。地方紙頼みの通信社の経営は厳しさを増す一方だ。時事通信の40代社員からは「クレームばかりで契約料を上げようとしない地方紙を切って、ネットメディアなどもっと違う契約者やビジネスモデルを考えるべきだ」との声も上がる。

 境社長には20年以上続く経営不振という重い課題の解決を宣言していただけに、今回の「カラオケ事件」は痛手となりそうだ。「経営者にとっては朝出社して電通株の上下をチェックしていればいいだけのイージーな会社」(先のベテラン社員)からの脱皮を求められそうだ。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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