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木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ新型「ミライ」、先代から劇的に進化…航続距離850km、大気中のPM2.5も除去

文=木下隆之/レーシングドライバー
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トヨタ自動車・新型「ミライ」

 トヨタ自動車の新型「ミライ」はコンセプトを変え、性能を大幅に熟成させて誕生。脱炭素化に舵を切る日本政府にとって期待したいモデルとして、もてはやされる。「2050年までにCO2排出量をゼロにする」と、菅義偉首相が宣言したばかりだ。環境保護の機運が高まるなか、ミライが担う役割は大きい。

 水素の電気分解を利用して発電するミライは、走行中にC02を一切、排出しない。搭載する燃料は水素だけで、大気中に無限に漂う酸素と結合させて発電し、その電力でEV(電気自動車)として走る。排出するのは水だけだ。フロア下の配管から水を滴らせる。“究極の自動車”といわれるのは、それが理由だ。

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 ただし、普及には厚い壁がある。まず障害になっているのは、水素充填施設が少ないことだ。官民あげて水素ステーションの増設に動いているが、現在、日本には2400カ所しか施設がない。トラックやバス等の商業的な乗り物は、ルートや運行距離が固定化されているから普及は進む。だが乗用車では、近隣に水素ステーションがなければ購入に二の足を踏む。ずいぶん減ったとはいえ、ガソリンスタンドはまだ至る所で見かけるし、EV用の給電システムも珍しくはない。現状で販売実績4000台以下の水素自動車を普及させるためには、まずインフラ整備が不可欠なのだ。

 ただ、クルマとしての進化も確実に進んでいる。新型ミライの航続距離は約850km。初代が約700kmだったから、飛躍的に伸びたといえる。いたずらに水素搭載量を増やしたのではなく、エネルギー効率を高めた結果だというから頭が下がる。水素ステーションの数が普及の障害になっているというのなら、航続距離を伸ばすことで対応しようというわけだ。

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 興味深いのは、ミライが特殊なモデルではないという施策である。先代は、いかにも特殊なクルマであることが、その出で立ちから想像がついた。実際に水素燃料自動車は特殊なパワーユニットを採用しているのだが、新型はごく自然に、街中に溶け込むような雰囲気を漂わせる。

 ボディサイズはトヨタ最上級である。レクサス「LS」のプラットフォームを利用することで、クラウンよりも大きい。そしてその体躯は長く、広く、低い。無骨だった先代とは、まったく異なる。スタイリッシュなフォルムとなったのだ。「水素燃料だからミライを購入する」ではなく、「気に入って購入したら、たまたま水素燃料車だった」と思わせるスタンスである。

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 走りも同様に自然な味付けである。先代が前輪駆動だったのに対して、新型は後輪駆動に改められた。しかも、前後重量配分は「50:50」である。ショーファードリブン仕様の設定があるように、存在は高級路線なのだが、走りのフットワークも重くない。胸のすくような走り方をする。

 しかも驚きは、大気中のPM2.5などの物質を吸収する点だ。「ゼロ・エミッション」ではなく「マイナス・エミッション」だというから頭が下がる。エアフィルターが空気清浄機の役目をするのだ。「走る発電所」であるばかりか、「走る空気清浄機」である。

 脱炭素社会に向けての救世主になるのか。しばらくミライから目が離せない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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