
3日に投票日を迎えたアメリカの大統領選挙であるが、マスコミなどの世論調査報道を信じれば、バイデン候補が優位に立っていると見える。期日前投票が9000万票を超え、郵便投票が増えた影響もあり、最終投票率は1908年以来の65%に達すると予想されている。投票率が高ければ民主党候補が優位に立つといわれているので、バイデン候補優位の報道に信憑性はあるだろう。
しかし、その一方で、隠れトランプ支持者も多いのでトランプ氏が勝利すると予想する見方も多い。前回の大統領選では予想に反して民主党のクリントン氏を破って当選したトランプ氏であるが、今回もその再来はあるのだろうか。
前回の大統領選では、見捨てられたラストベルトのプア・ホワイト(衰退産業で働くか失業中の低学歴・低スキルの中高年白人労働者)や、人種差別とミソジニー(女性嫌悪・蔑視)の人々の支持によってトランプ氏は当選したといわれているが、今回はどうか。
コロナ対応も含めて暴走し、発言をいっそう過激化させ社会分断を煽るトランプ氏、“Build Back Better”(より良い復興)というスローガンを示して分断前のノーマル(通常状態)に戻るというスタンスで民主党を一応まとめたバイデン氏という、ともに70代半ばの白人男性同士の対決である。テレビ討論も含めて、これまでの選挙キャンペーンを見るに、トランプ氏のこの4年間の成果を問うという雰囲気の選挙ではないように見える。むしろ、社会の分断の方向をとるか、団結・連帯の方向をとるかを選択する選挙のように見える。
しかし、内実はどうか。トランプ氏のスローガンは、前回選挙の“Make America Great Again”を受けて、今回は“Keep America Great”である。この4年間でアメリカを再び偉大にしたとは考えられないが、トランプ氏は復活した偉大さの維持を掲げている。しかし、その偉大さとは何か。筆者は、トランプ氏が復活させたいのは、アメリカの偉大さではなく白人の偉大さではないかと考えている。つまり、今回の選挙は“Make WHITE Great Again”が選挙の争点ではないか。
人種構成の変化
なぜ今回の選挙では低位中産階級以下の白人ではなく、白人全体の偉大さを掲げるのか。それは、近々訪れる人口構成における白人の少数派への転落への警戒である。米国国勢調査局の推計では、2060年までに米国の人口は4億1680万人となるとされている。人口は増加するがその増加は緩やかであり、2030年代の前半には、移民の増加数が国内出生数を上回ると予想され、移民国家の様相をいっそう強める。その過程で着目されるのは、急激な高齢化と人種構成の変化である。