
11月3日に行われた米国大統領選挙の投票は、激戦州の開票作業が続いており、6日午前の時点で勝敗は確定していないが、民主党のジョー・バイデン前副大統領が優勢な情勢となっている。日本をはじめ世界の国々がそれぞれの思惑から、接戦にもつれ込んだ選挙戦の行方を注視しているなか、本コラムでは、次期大統領がバイデン氏となった場合の世界の原油市場や中東情勢に与える影響について考えてみたい。
まず原油市場についてだが、バイデン氏の勝利ははっきり言ってマイナス材料である。バイデン氏は選挙期間にドナルド・トランプ大統領が脱退した「気候変動枠組条約」へ復帰など環境政策の推進を明言しており、世界最大の原油需要を誇る米国で、今後その需要が減少する可能性が高いからである。
新型コロナウイルスのパンデミックにより、今年の原油市場は未曾有の危機に見舞われている。今年前半、世界の原油需要の3割に相当する日量3000万バレルの需要が消失し、足元の需要も前年に比べて日量約800万バレル少ない状況となっている。
この異常事態に慌てたOPEC加盟国とロシアなどの非加盟国で構成される「OPECプラス」は、今年5月から史上最大規模(日量970万バレル)の協調減産を実施した。7月から協調減産の規模を日量770万バレルに縮小し、現在に至っているが、米WTI原油先物価格は思うように回復しない。1バレル=60ドル台から4月にマイナス約40ドルに急降下し、その後40ドル前後で推移している。
OPECプラスは、来年1月から協調減産の規模を日量580万バレルに縮小する予定だったが、欧米で新型コロナウイルスの感染拡大が起きていることから、再検討を余儀なくされている。サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは10月28日、「足元の原油需要は弱すぎて、OPECプラスが来年1月から減産規模を縮小すると判断できないのではないか」との見方を示したが、11月30日~12月1日に会合を開くOPECプラスは、協調減産の規模を縮小するのではなく、逆に拡大することを検討しているようである(11月3日付ロイター)。
原油価格のさらなる下落を防ぐためには協調減産の規模を拡大するしか手がないが、OPEC加盟国の財政はすでに「火の車」となっている。
米エネルギー省は11月3日、「OPECの今年の原油売却収入は昨年(5950億ドル)の約半分(3230億ドル)になる」との予測を明らかにした。原油売却収入が2002年以来の18年ぶりの低い水準となっているOPECにとって、減産規模を拡大しても原油価格が上がらなければ目も当てられない。