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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

モーツァルトを死に導いた『レクイエム』の秘話…夫人と作曲依頼者、欲にまみれた人間模様

文=篠崎靖男/指揮者
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フェラーリ・デイトナ(「Wikipedia」より)

 岐阜県の民家の古い納屋から、埃だらけの高級車が見つかったことがニュースで大きく報じられました。もう3年前の話ですが、車内もかなり汚れ、ただ放置されていたその赤いクルマは、なんとイタリアの高級スポーツカーメーカーとして世界的なフェラーリが1969年に生産した、世界に1台しかない特別仕様車「フェラーリ365GTB/4」、通称“デイトナ”だったのです。

 フェラーリは1968年からのたった5年間、デイトナを約1400台生産しましたが、1967年にアメリカのデイトナ24時間レースに出場するために、軽量合金であるアルミニウムボディ車を5台だけ特別生産しました。そのなかでも、公道走行可能なタイプは前出の納屋から見つかった1台だけでした。実はこのクルマは、これまでに数奇な運命をたどっていたのです。

 まず、イタリア国内で2年間という短い期間に何人かのオーナーを転々とし、1971年に日本に輸入されたのです。それから日本国内でも何度か売買されたのち、なぜか岐阜県の民家の納屋に収まります。そして、走行することも赤いボディーを磨かれることもなく、40年近くも放置されていたそうです。

 しかし、このフェラーリはまだその生涯を終えていませんでした。天災でもあれば崩れそうな古い納屋から無事発見されると、洗浄も修復もされずに再び海を渡り、イタリアのフィオラノ・サーキット、フェラーリ社のテストコースで競売会社サザビーズのオークションにかけられ、なんと180万ユーロ(約2億3300万円)の値が付いたのです。持ち主も、納屋に放ってあったクルマが、世界に1台しかない貴重な高級車だとは思いもしなかったのではないかと思います。

 ところで、外装も内装もきれいにしてからオークションにかけたら、もっと高く取引されたのではないかと思われるかもしれませんが、以前、オークションに携わっている方に聞いたところ、余計なことをすると大きなダメージとなって値打ちが下がることがあるそうです。そのため、見つかったときの状態のままで売買し、買い取った方が少しずつ修理したり、磨いたりするのもマニアの楽しみのひとつのようです。

 これは、楽器の世界でも同じです。もし、音楽が大好きで、ご自身もヴァイオリンを弾かれていたお金持ちのおじいさんの遺品から古いヴァイオリンが出てきたとしたら、指1本触れずに、すぐに信頼できる楽器屋に持っていってください。もしかしたら、最低1億円は下らないイタリアの名器、ストラディバリウスかもしれません。たとえば、あまりにも埃をかぶっているからといって、磨いたりしてニスがはがれたりすると大変ですし、乱暴にこすってヒビでも入ったら、一巻の終わりとなります。

 とはいえ、そんなうまい話はなかなかあるものではないでしょう。むしろ、後生大事にしていた名器のヴァイオリンが、よくよく鑑定してみると偽物であったというほうが多いと思います。

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