2019年に行われたホテル・不動産大手のユニゾホールディングスに対するTOBの結果をみれば明らかだ。同年7月、まず旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が1株3100円でTOBを仕掛けた。そこにソフトバンクグループの米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループがホワイトナイト(白馬の騎士)として1株4000円で登場してきた。

 両社によるTOB合戦の期待からユニゾ株は高騰。HISは自身が提示したTOB価格以上でユニゾHDの株価が推移したためTOBを断念した。先攻のHISは後攻のフォートレスの返し技に敗れた。ニトリも同様である。DCMによる島忠の買収の動きを察知していたが、先に仕掛けるとHISの二の舞になると判断し、後攻に回った。DCMに先に発表をさせたほうがTOBの価格を含め戦略が立てやすいと考えた。

 DCMのTOB価格は1株4200円、総額約1600億円。島忠の純資産(1815億円、8月末)を下回る。ニトリは「こんな割安の水準なら、勝負できる」と確信した。ニトリがDCMより1300円高い5500円を提示した背景には、「島忠株がDCMによって割安に評価された」(流通担当のアナリスト)ことが挙げられる。

旧村上ファンドが島忠株を取得

「物言う株主」を含めた複数のファンドも島忠株を取得している。旧村上ファンドの村上世彰氏がかかわる投資会社シティインデックスイレブンスは10月21日、島忠の発行済み株式の8.38%を取得したことを明らかにした。これに先立つ同月14日、島忠の岡野恭明社長に書簡を送り、「TOB価格が本来価格に比べて割安ではないか」との疑念を伝え、島忠の株主へのいっそうの配慮を求めた。

 シティインデックスイレブンスは「島忠がDCM以外の買い手を模索した形跡がない」と批判したが、島忠が「ニトリとも誠実に協議を行う」との態度を表明したことを踏まえ「株主としてうれしい」と評価した。ニトリがDCMより1300円高い5500円を提示したことで、ファンドに高値で売り抜ける絶好のチャンスが訪れた。

「お値段以上の島忠」の買収に強い意欲

 北海道発祥のニトリの東上作戦の総仕上げは、首都圏決戦で勝利することである。ニトリ創業者の似鳥会長は16年ごろ、今回辞任することになった大塚家具の大塚久美子社長と会食した。「それとなく買収を打診した」と似鳥氏自身が語っている。久美子社長が創業者の父親である勝久会長との権力闘争に勝利して鼻息が荒かったときだ。久美子社長は似鳥氏のオファーに乗ってこなかった。真意が伝わらなかったわけではあるまい。策士といわれる似鳥氏の言動だから警戒された、と関係者はみている。大塚家具は19年末、ヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)に支援を求めた。似鳥氏の大塚家具獲りの“熟柿作戦”は失敗に終わった。

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