
11月12日にソニー・インタラクティブエンタテインメントのプレイステーション5(以下、PS5)が発売される。9月18日より予約販売の受付が始まり、先着順で予約できるECサイトでは定価の数倍もの価格で転売する“転売ヤー”が現れるなど、熾烈な争奪戦となっている。
発売前から業界の話題を席巻するPS5の登場によって、ゲーム市場はどのように変化するのか。ゲーム事情に詳しいコラムニストのジャンクハンター吉田氏に聞いた。
「PS5がゲーム市場を席巻」は間違い?
PS5のディスクレスのデジタルエディションは希望小売価格3万9980円、Ultra HD Blu-rayディスクドライブを備えたモデルは4万9980円となっており、両モデルともにCPUと4Kの高精細グラフィックスを実現するGPUが統合されたカスタムプロセッサ、ゲームのロード時間を大幅に短縮させるカスタムI/Oを搭載するなど、ハイスペックな仕様となっている。
そんな高機能にもかかわらず、予想より低価格だったこともあり、9月中旬から始まった予約には多くの人が殺到。「ヨドバシ.com」では抽選倍率がデジタルエディションで91倍、通常モデルで40倍となるなど、大きな話題となった。
こうした争奪戦を見れば、今後はPS5がゲーム市場を席巻していくように思えるが、吉田氏は否定する。
「いわゆるゲームマニアやハードウェア好きは必ず買うでしょうし、世界的にもある程度は売れると思います。しかし、PS5の登場でゲーム市場そのものに大きな変化が起こるかというと、そうはならないでしょう。グラフィックや処理速度などのスペックはすごいかもしれませんが、それはハード開発者の自己満足でしかありません。これは何度も言われていることですが、どんなにハードがすごくても、良いソフトがない限り“タダの箱”なんです」(吉田氏)
「アイコン不在」というソニーの課題
今後、PS5では「グランツーリスモ」や「バイオハザード」など人気シリーズの最新タイトルが発売されるとアナウンスされている。しかし、これらのシリーズはすでに数十年の歴史があり、新規のファンを取り込みにくく、どちらかといえばコアゲーマー向きだ。さらに、その他の目玉ソフトも続編やリメイクものばかりとなっている。
「現状、ユーザーの期待を上回るタイトルがないのです。それに、PSシリーズにはアイコン的存在のソフトやキャラがいまだにない。これはソニーが長年抱えている課題なのですが、任天堂におけるマリオ的な存在をプレステで生み出すことができていません。ファンは『ラチェット&クランク』や『クラッシュ・バンディクー』を挙げると思いますが、一般的な知名度はまだまだです。要するに、ソニーのプレステは任天堂のようにファミリー層に訴求していくのか、あるいはコア層に刺さる海外タイトルを推していくのか、戦略がどっちつかずの印象なんです」(同)
今やゲーム市場の中心はアメリカなどの欧米圏。その欧米でどのくらいユーザーを獲得できるかがビジネスの鍵となるが、「PS5の人気は芳しくない」と吉田氏は言う。