
今季限りでの引退を表明している阪神タイガースの藤川球児が11月10日、本拠地の甲子園で引退登板した。事前に藤川引退試合として喧伝されていたこともあり、現地にはファンが殺到し、さまざまなメディアがその一挙手一投足を報じた。
そんななか、藤川が対戦した最後の打者となった読売ジャイアンツ(巨人)の重信慎之介に関して、インターネット上で話題が沸騰した。
藤川は9回、0対4と負けている状況で登板。巨人の原辰徳監督は、「巨人を代表する打者」として、8日に通算2000本安打を達成した坂本勇人を代打に送った。坂本は全球直球の末に三振、その次に代打で登場した中島宏之も全球直球の末に三振。そして重信は2球目の直球をやや中途半端なスイングでバットに当てると、力なくセカンドフライに終わった。
この様子をテレビ解説の掛布雅之氏が、「重信君はわかっていませんね。もうちょっとあるだろ」と発言したことで、ネット上には「重信は空気が読めていない」「常識知らず」など、重信を批判する声が殺到。
「確かに、慣例的に引退登板する投手に敬意を払って三振することはよくあります。さらに、4点差がつき巨人の勝利が濃厚な状況だったので、三振しても重信は責められなかったでしょう。しかし、すでに巨人の優勝が決まった後の試合とはいえ、公式戦の1試合ですから、手を抜くべきだったという意見は暴論でしょう。真剣勝負の末に三者凡退に抑えた藤川を称えるべきで、凡退した重信を責めるのは的外れといわざるを得ません。掛布さんも、三振すべきだったとまでは思っていないはずです。重信の次の打者が巨人の若き主砲・岡本和真だったため、重信が出塁して、最後に藤川と岡本の対決を見たかった、という願望の表れた発言でしょう」(スポーツジャーナリスト)
掛布氏は前出の発言のあと、「フライになるのはいいが、もっと(しっかりとバットを)振ってほしかった」と続けている。藤川が全球直球での力勝負を挑んでいただけに、重信も“三振かホームラン”といった全力勝負をしてほしかったという意味だろう。
大きな舞台でもホームランバッターを相手に真っ向から直球勝負を挑んできた藤川。「直球が来るとわかっていても打てない」と数々の打者が脱帽し、多くのファンを魅了してきた。そんな記憶に残る名勝負を多く演出してきた阪神の大投手が、笑顔でマウンドを去った。藤川自身は、重信に三振してほしかったなどとは、微塵も思っていないだろう。
(文=編集部)