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コロナ禍でも賞与減額は0.05カ月分…“厚遇天国”公務員の地獄、派遣社員への差別

文=編集部
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コロナ禍でも賞与減額は0.05カ月分…厚遇天国公務員の地獄、派遣社員への差別の画像1
「Getty Images」より

 13日午前、Twitter上では「公務員の厚遇天国」がトレンド入りし、物議を醸していた。発端は「PRESIDENT Online」が12日、記事『「たった0.05カ月分のボーナス削減」に怒りを隠さない公務員の厚遇天国』を公開したことだった。

 同記事では全日本空輸(ANA)が冬のボーナスをゼロにする方針を示したことの経緯を説明した上で、本年度の国家公務員の月給とボーナスの改定を求める「人事院勧告」を取り上げ、次のように論評した。

「人事院は10月にまず国家公務員のボーナス(期末・勤勉手当)の『引き下げ』を求める勧告を出した。ボーナスの引き下げ勧告は東日本大震災時以来、10年ぶりだ。引き下げ幅は『0.05カ月分』で、4.45カ月の支給を求めた。その後、10月28日に月給の改定勧告が出された。内容は『据え置き』。据え置かれるのは7年ぶりとのことである。

 これを受けて政府は11月6日に『人事院勧告の完全実施』を決め、給与法改正案を閣議決定した。開会中の臨時国会で審議され、可決成立する見込みだ。

 しかし、『ボーナス0.05カ月分削減、月給は維持』というのが『民間並み』というのだから恐れ入る。新型コロナの影響を受けていない優良企業だけをサンプルにでもしなければ、そんな数字は出てこないだろう」

 国家公務員の給与に原則連動して地方公務員の給与も決まっていくことにも触れ、「地方ではすっかり高給取りの部類に入った県庁職員や市役所職員の消費支出が地方経済を支えている」と指摘。税収の減少と公務員の人件費増加のツケがいずれ国民に回ってくると述べ、「単純に公務員のひとり当たりの給与を減らせばいい、というわけではない。政府の役割を見直し、仕事を整理して、全体の公務員人件費を抑えていく。民間企業では当たり前のリストラ、真の意味の『構造改革』をそろそろ真剣に霞が関で実施することを考えるべきだろう」とまとめた。

ネットでは「公務員に限らず正職員に嫉妬している」との批判も

 同記事に対してTwitter上では、公務員やその関係者とみられる人々から次々のような批判の声が次々に上がった。

「何故、叩く必要が?『皆で貧困平均化』してどうするの?金がある人が経済回さないと」(原文ママ、以下同)

「『民間のボーナスが減ったから公務員も減らせ』と言う嫉妬と怨念だけの内容。なぜ『両方上げろ』と言えないのか」

「『公務員の厚遇天国』と書いているのは、公務員に限らず正職員に嫉妬している人や、公務員試験に合格できなかった人の嫉妬だと考えられる。実際には災害などの緊急時には警察や消防のような立場でなくても公務員は出勤が強制される」

 確かに、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、今年は国、地方の別なく官庁や自治体の担当部署はフル稼働を余儀なくされた。内閣府や厚生労働省などでは過労死ラインに近い残業を余儀なくされている職員も多い。それなりの給与補償があってしかるべきだろう。また、民間企業の給与が下がっているからといって、同じように下げることが日本経済にとって良いのかは疑問が残る。

公務員たちの「天国と地獄」

 また「公務員は天国」とひとくくりにできない事情もあるようだ。関西地方の地方自治体に4年間の任期付き職員として就職した20代男性は次のように話す。

「公務員だからといって、全員が厚遇されて天国にいるわけではないです。まず私たちのような任期付き職員や派遣社員の給料や待遇を同じにしてほしいです。

 任期付き職員への差別は確実にあります。例えば基本入庁1年目で受ける研修のメンバーに、我々は入れません。でも、やっている仕事は同じです。

 私は税務関係の部署の任期付き職員になりました。正職員で入庁した同年代は、勤務時間中にしっかりとした研修を受けられるのに、私はなんの知識もなく現場に配置されました。

 お金がからむことなので毎日、住民の方から難しい相談や苦情がきます。本来は正規職員でなければ答えられない内容なのに、そういう住民の方が来ると、みんなすぐに姿をくらしまします。結局、終業後に自宅で自主的に税務を勉強して、何とか仕事をさばいています。

 宿直もあります。宿直業務では婚姻届等々の戸籍事務や葬儀など、配属部署と全く関係のない業務を行う必要があります。これに対しても研修やマニュアルはなく、簡単な説明だけを受けて業務をしています。同じ任期付きの職員の先輩からは5年目はないので、今の内から就職活動もしておけと言われています。

 確かに、正職員の試験に合格できなかったのは自分の責任です。でも、その一回に成功したかどうかで、ここまで差別する必要ってあるんでしょうか。試験に失敗した後は、どれほど努力しても正職員になる道はなく、任期が切れるまで使い潰されるという現行の制度には納得がいきません。せめて無期転換のハードルを下げるか、同一労働同一賃金の待遇に引き上げてほしいです」

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の復興のため、人材派遣大手のパソナから福島県の自治体に派遣された元職員の女性は次のように振り返る。

「寝る間を惜しんで、獅子粉塵の活躍をされていた正職員の方はたくさんいました。原発事故は、通常の自治体の仕事の範疇を越えていました。県内県外に離散した住民へのフォローや除染計画、住民の帰還支援など、誰も解決策がわからない仕事ばかりでした。

 特に、他県の自治体から派遣されてきた正職員の方々の活躍は目覚ましかったと思います。退庁後も、仮設宿舎で遅くまで派遣職員同士で明日の仕事の打ち合わせをすることも珍しくありませんでした。土地勘もなく、ひとりも知人のいない環境下で、みなさん文字通り手探りで業務をしていました。

 一方で、元から自治体にいたプロパーの職員には、民間や他の自治体からの派遣職員に仕事を丸投げする方もたくさんいらっしゃいました。特に復興関連のプロモーション事業での広告代理店への丸投げは顕著だったと思います。キャンペーンのリーフレット作成などの事業では、『こんな感じで』『適当に』としか指示しません。綿密な進行管理などは、外部委託業者と派遣職員でやりました。そんな中、1日中、残業してまでパソコンに向かってネットサーフィンをしている正規職員の方もいて、違和感がありました」

 中央省庁や大阪府などの地方自治体では、近年の財政圧縮の煽りを受け、パソナなどの派遣労働者や任期付き職員の割合が増えている。単に職員数を減らしたり、給与を減額したりするのではなく、適正な人員配置がなされているのか、正規職員と非正規で同一労働同一賃金の徹底が図られているかをまず検証する必要がありそうだ。

BusinessJournal編集部

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