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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

危険なダイエットサプリが氾濫…「リポドリン」は重篤な副作用の恐れ、死亡例も

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
危険なダイエットサプリが氾濫…「リポドリン」は重篤な副作用の恐れ、死亡例もの画像1
「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛期間以降、国内健康食品EC(電子商取引)市場が伸びている。特に「代謝アップ」「飲むだけで痩せる」「食事制限なし」などの謳い文句と共に販売されるダイエットサプリメントは魅力的に見え、インターネット上での売り上げは増加傾向にある。

 この数年、メディアでは健康をテーマとした発信が人気を集め、サプリに対して安全というイメージを持つ消費者が多い。しかし、サプリは食品に分類されるため薬のような一定の規定がなく、すべてが安全とは言いがたい。また、海外から輸入されるサプリにおいても日本での規制が追いつかず、その有効成分に違法な成分や有害な成分が含まれているケースもある。

 実は今、SNSで若者を中心に投稿される写真や動画のなかに「リポドリン」という、海外から輸入販売されているダイエットサプリが目立つ。しかし、このリポドリンは、重篤な副作用のみならず死者が出ているとして、すでに販売が禁止される国もある。

SNSに溢れる奇妙な投稿

 SNSで「リポドリン」と検索すると、多くの投稿が見つかる。実際に服用していると思われる人の投稿では、「手が震える」「激しい動悸」「胃のむかつきで食欲がなくなる」などのテロップがついた動画もある。さらに驚くのは、そういった投稿者のコメントを見ると「159cm、46Kgで目標体重40㎏」や「1カ月で7kg減」といった、とても健康的とは思えない目標を掲げている人が多い。

 CA(客室乗務員)としての経験もあり、諸外国のサプリメント事情に詳しいスポーツファーマシストの石田裕子氏に、リポドリンについて聞いた。

「海外でもSNSでは、『6週間で35kg減』『1週間で6kg減』など、現状のBMI(ボディマス指数)はわからないものの、健康的な減量とは程遠いコメントで溢れています。また『空腹時に服用すると吐き気が止まらない』『リポドリンを飲むと体が軽快に動いて調子がいいが、飲み忘れた日は昼寝を必要とするほど体がだるい』といったコメントも見受けられますが、リポドリンの使用を中止せず継続しているケースが多いようです」(石田氏)

リポドリンの効果

 リポドリンは天然ハーブを主成分とするものが多く、脳を刺激し、代謝を上げて体内の消費カロリーを増加させることで体重の減少を促進するといわれている。リポドリンを販売するサイトを見ると、有効成分は「エフェドリンエキス」と記されている。エキスとは基原原料を抽出し濃縮したものであり、エフェドリンそのものを含有するか否かは不明だ。多くは18歳未満使用禁止となっており、作用が強力だということだろう。

 エフェドリンについて懸念する理由は、エフェドリンは覚醒剤原料であり、その構造が覚醒剤であるメタンフェタミンに非常に類似していることにある。10%を超えてエフェドリン、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリンを含むものは、覚醒剤取締法の対象となる。エフェドリンは漢方薬の麻黄の成分でもあり、感冒や気管支喘息などに用いられるが、下に示したような副作用も多い。

循環器:心悸亢進、血圧上昇
精神神経系:頭痛・頭重、振戦、不眠、めまい、発汗、神経過敏、脱力感
消化器:悪心・嘔吐、食欲不振
泌尿器:排尿困難
過敏症:発疹
長期連用:不安、幻覚、妄想を伴う精神症状
その他:口渇

メジャーリーガーの死

 アメリカでは2003年にメジャーリーグ・ボルチモアオリオールズの投手、スティーブ・ベックラーが春季キャンプ中にフロリダで死亡したが、その原因がエフェドリンを使用した減量にあったことが判明。これをきっかけに、FDA(食品医薬品局)はエフェドリン含有製品を問題視し、販売禁止となった。それ以前はリポドリンにもエフェドリンが含まれていたが、現在は含まないという。
「リポドリンは2015年以降、興奮・覚醒作用を持つエフェドリンを含むとしてFDAとメーカーの間で訴訟問題となっていましたが、2018年以降はエフェドリンを含まないとする製品をリニューアル販売しました。内容成分の真偽に関して評価は分かれますが、リニューアル後も依然として競合他社と比較して人気は高いのが現状です。国民の75%がなんらかのサプリを使用しているというサプリ大国アメリカにおいては、都市部を中心に運動や食生活などのライフスタイルの改善を行っていかなければ、持続可能な健康と減量を達成できないという考え方が主流となってきています」(石田氏)

日本の危機管理意識の低さ

 現在、アメリカFDAはサプリに関して規制を行っていない。しかし、さまざまなサプリが市場に横行している近年では、サプリを規制するよう求める動きが広がっており、メーカーに対してサプリの安全性データと成分に関する書類を提出するよう求めている。

 また、ヨーロッパ諸国ではサプリにハーブを使用することが多いため、特にドイツでは厳しい規制がされている。製品に含まれる成分に関して安全性を裏付けるデータを提出し、要件を満たさないものは流通できないだけでなく、海外からの個人輸入に対しても特定の成分を含む場合は医薬品と見なされ、薬事法の対象になる。

 日本では現在、サプリに関して規制は行われておらず、海外からのサプリの輸入に関しても厚生労働省のホームページで注意喚起するにとどまっている。予防医学推進の意味を含めて、安全で効果的なサプリの使用を促すため、早々の規制が求められる。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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