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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

新型コロナ、ワクチンや集団免疫での収束は期待薄か…スペイン風邪との類似点と相違点

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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新型コロナ、ワクチンや集団免疫での収束は期待薄か…スペイン風邪との類似点と相違点の画像1
「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、フランスでは再びロックダウン(都市封鎖)を行い、米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によると全米では11月24日時点で累計1200万人超が感染、死亡者数も25万人を超え、事実上の外出禁止を促す州もある。全世界では約6000万人が感染し、約140万人が死亡している。

 日本においても感染者数は連日、各地で過去最多を更新し、25日時点での累計感染者数は全国で13万5846人い上る。この状況を受け、菅義偉首相はGo Toトラベル・Go Toイートの見直しを表明、混乱をきたしている。

 長引くコロナ禍において、日本のみならず世界が注目するのはワクチンの誕生だ。現在、世界で100を超えるワクチンの開発が行われている。そんななかアメリカでファイザー製薬が、開発中の新型コロナウイルスワクチン候補の緊急使用許可(EUA)を米食品医薬品局(FDA)に申請した。申請が許可されれば、感染リスクが高い医療従事者や高齢者に投与される運びとなるが、現在のスピード開発には期待の一方で、安全性を危惧する声もある。

 一般的にワクチン開発には5~10年を要する。その過程は下図の通りであり、どの過程にも多くの時間を要する。しかし、現在、ファイザーのワクチン開発を牽引するドリミッツァー氏は、2009年の新型インフルエンザによるパンデミックの際、スイス・ノバルティスでワクチン開発に取り組んだ経験がある。そのときに3つのワクチンを生み出し、“過去最速のパンデミック対応”として世界に称賛された。そういった背景が、ファイザーがワクチン開発に一歩リードした状況を生み出しているのだろう。

新型コロナ、ワクチンや集団免疫での収束は期待薄か…スペイン風邪との類似点と相違点の画像2 現在、ファイザーがFDAに緊急使用許可を申請したワクチンは、4万3000人が参加した治験で「95%の確率で感染を防いだ」との暫定結果を発表しており、“有効率95%”という数字に世界が大きな期待を寄せている。しかし、この有効率95%という数字は誤解を生みやすい表現である。100人が接種して95人に効果があるということではない。

 ワクチンの有効率とは、ワクチン接種と非接種のグループにおける発病率を相対的に比較したものである。有効率95%とは、たとえば「ワクチン非接種グループ1000人のうち100人に発病」したのに対し、「ワクチン接種グループでは1000人のうち5人に発病」したことを表す。95%の有効率という言葉はセンセーショナルだが、副作用のリスクや重症化の予防など、まだまだ不明な点が多いのが現状だろう。

スペイン風邪と類似する感染拡大

 1918年から翌19年にかけてアメリカで発生したインフルエンザは、スペイン、仏、英国などヨーロッパ各地に広がり、「スペイン風邪」と呼ばれた。感染は全世界に広がり、日本での感染は第三波で収束した。

新型コロナ、ワクチンや集団免疫での収束は期待薄か…スペイン風邪との類似点と相違点の画像3 感染拡大と減少を繰り返した経緯は、新型コロナウイルスの感染拡大にも類似するように感じる。

 ワクチンも有効な治療薬もなかった当時、感染収束は集団免疫の獲得によると考えられている。当時の交通手段に比べて格段に人の往来が激しい現代、第三波の中、ウイルスの拡散は考える以上に広範囲に及ぶだろう。そうなると、新型コロナについても集団免疫を獲得して収束に向かうというシナリオに期待したくなるが、専門家は一様に集団免疫獲得は厳しいとの見方を示す。

 そこで、世界的感染拡大に歯止めをかけるためにはワクチンの誕生が期待されるが、直ちにできる感染予防は、我々各人が「手指消毒、三密回避」を遂行することである。そういった感染予防が目に見えた効果をもたらすことは、第一波でも証明されている。

 小池百合子東京都知事は11月19日、会食時に心がける「5つの小」として「少人数」「小一時間」「小声」「小皿(に取り分ける)」「小まめ(な手洗いやマスク着用)」を提唱した。感染拡大を食い止めるのは、我々の行動であることを改めて認識すべきだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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