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19億円詐欺事件で“風評被害”はあるのか?第一生命保険の現役セールスレディに聞いてみた

文=後藤豊/フリーライター
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第一生命保険の日比谷本社(「Wikipedia」より)

 89歳の「特別調査役」たる第一生命保険の元女性社員が、顧客から約19億円を詐取した事件。架空の取引を持ちかけるという手口で、20人以上が被害に遭ったとみられている。

 この女性社員は、地元の山口銀行の元頭取と親しくなったのをきっかけに、銀行の支店長や地元の財界、医師会などに“金持ち人脈”を広げていったという。

 真相は明らかになっていない部分も多いが、こうした事件が明るみに出たことで、保険の勧誘がやりにくくなってはいないのか。いわゆる風評被害はないのか、数名の第一生命セールスレディに話を聞いてみた。

顧客に聞かれまくる「実際はどうなの?」

「(セールスが)やりにくくなったのは確かです」と話すのは、神奈川県内のセールスレディである津田美紀さん(仮名・45歳)だ。

「第一生命の名前が出ているので、お客さんと会うたびに『すごい話だね、実際はどうなの?』などと聞かれます。実際も何も、私たちも報道で初めて知りましたし、この女性と会ったこともなければ、どんな人物かを知る人すら、周りにはいません。

 こういうことは言うな、など会社からの指示もありません。うちの上司も、私たちにこう言え、という指示は受けていないようです。これが山口近辺の支社なら何かを言われているかもしれませんが、あまりにも遠すぎますしね。

 新規勧誘がしにくくなったのでは? とも言われます。確かに会社の看板を背負ってはいますが、保険の世界って人間対人間の付き合いでもあり、お客さんによりお付き合いの仕方も違うんです。

 コロナ禍の今は、戸別訪問とともに、お手紙やメールを送りつつ、私を信用してくれる人を決して裏切らないよう、誠心誠意、がんばっていくしかありません。今はただ、『信頼回復に努めます』としか言いようがないですね」(津田さん)

 埼玉県内のセールスレディ・山川由美さん(仮名・38歳)にも話を聞いてみた。

「私も会社からは何も言われていませんが、上司が『この件でお客さんが二の足を踏んでいるようだったら教えてくれ』と言われました。先輩たちも若干やりにくそうですが、あの件が原因での門前払いなどはありません。社内の空気も、今まで通りです。

 私自身、お客さんとの話のタネになっています。『あの山口の件、ものすごい話ね』『そうなんです、申し訳ありません』と。話のスケールが違いすぎるので自分からは話しませんけど。いくら長年の付き合いとはいえ、5000万円もの保険金を手書きの借用書だけで預かるなんて……。よほどそれまでの付き合いがしっかりしていて、信頼関係ができていたんだろうなって感じました。中には年利30%で預けた人もいたようですが、3年で元が取れる運用なんて、この世にあるんですかねぇ」(山川さん)

典型的な「ポンジスキーム」の手口か

 投資に詳しい経済ライターの井山良介氏は、次のように解説する。

「このセールスレディは『自分だけに使える特別な運用枠がある』として話をもちかけたようですが、これは典型的なポンジスキームでしょうね。Aさんから預かった金の利息をBさんから預かった金で払い、次はCさん、Dさんと預ける人と金を増やしていく投資詐欺の手口です。本来は預かった資金を運用して利益を出し、配当金を支払うわけですが、運用など一切していなかったはず。ねずみ講がやる手口ですが、いつか必ず破綻します。そもそも年利10%などという投資は危険すぎます」

 世の中に、甘い話など転がってはいないのである。

(文=後藤豊/フリーライター)

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

後藤豊/ライター兼タクシードライバー

1966年千葉県生まれ。東京都内の中小会社でタクシードライバーを兼務するライター。競馬と野球をメインに、雑誌や書籍で執筆をしている。主な著書に『テイエムオペラオー伝説』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(ともに星海社、共著)などがある。

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