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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

Sexy Zone・マリウス葉が陥った「OD」とは?薬物依存→心身に異常きたす恐れ

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
Sexy Zone・マリウス葉が陥った「OD」とは?薬物依存→心身に異常きたす恐れの画像1
「Getty Images」より

 人気アイドルグループSexy Zoneマリウス葉が、体調不良のため一定期間活動の休止することを所属するジャニーズ事務所の公式ホームページで発表し、ファンの間では不安の声が広がった。11月23日深夜、緊急搬送されたマリウス葉は、処方薬の過剰服用(オーバードーズ/OD)により意識も朦朧とし、何度か嘔吐を繰り返したと報道されている。

 処方薬とはいえ、ODは中毒症状や重篤な健康被害が出ることもあり、危険な行為である。処方薬の内容については明らかにされていないが、どんな薬でも決まった用法用量を守って服用することが大切だ。近年、意図的にODを行うケースもあり、問題となっている。

 ODとは、英語のOver(=過量)、Dose(=用量)の略語であり、処方された薬に依存してしまい、過剰に服用することを意味する。薬は決まった用量と服用方法を守ってこそ、症状を改善する作用をするが、過剰に服用したり服用方法を誤れば、体にとって毒となり健康被害をもたらすばかりでなく、“薬物乱用”となる恐れもある。

 ODによって薬物中毒になると、薬によっては昏睡、呼吸抑制、血圧低下などが起こる。昏睡状態で救急搬送されれば、薬を体から排出するための胃洗浄などの適切な処置が必要となる。今回のマリウス葉の一件では、胃洗浄の必要はなく点滴で薬の排泄を促したと報道されており、単に誤って服用したものと想像される。

 ちなみに、一般に問題とされるODでは、何度も過剰摂取することにより薬物依存となり、さらにODを繰り返すという悪循環に陥ってしまう傾向にある。薬物依存には精神的依存と肉体的依存があり、一度薬物依存に陥ると自力で薬を止めることは難しくなる。

・精神的依存…薬物を使用しないと不安や焦燥を感じ強く薬物の使用を欲求する状態。
・身体的依存…薬物の使用中止により禁断症状などの身体的な異常が起こる状態。

ODを引き起こす要因

 ODを引き起こす要因には、内的要因と外的要因があるといわれる。内的要因のなかでも多い傾向にあるのが、精神疾患の治療で継続的に向精神薬の服用しているなかで症状が安定せず、つらい症状から逃れるために薬に頼りODとなってしまうケースや、頭痛などのつらい症状を緩和するために鎮痛剤の量が徐々に増えてしまいODとなるケースなどである。外的要因では、職場や人間関係のストレス、貧困、DV(ドメスティックバイオレンス)、幼少期の虐待などが原因の精神不安から、薬に依存しODとなるケースもある。

 ODは、現代社会が抱える問題のひとつであり、医療現場でも積極的に防止に取り組んでいる。精神科では、患者の受診する間隔を短くし、患者が多くの薬を手にしないよう1回の処方日数を少なくする医師も多い。薬局でも患者に薬を渡す際には、しっかりと用法用量を説明し、残薬の有無などを確認し、ODの予兆があれば医師へ連絡するなど連携をとっている。ODを防ぐためには、多くの薬を持たないような環境をつくることが大切である。

 ODは、自傷行為のひとつでもあり、なんらかのSOSととらえてよいだろう。マリウスは、このところ心身に不安を抱え、通院を重ねていたという情報もある。学業と仕事に精一杯取り組む姿勢がファンから支持される魅力のひとつでもあるが、無理をしてストレスを抱えていたことは否めないだろう。休養中は再びODを行うことがないよう、周囲がサポートすることも必要だろう。ゆっくりと休養し、心も体も健康を取り戻してほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

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吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

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