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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

近親者に“おひとりさま”、こんな相続は二度とご免!生前に「相続人」が絶対やるべき備え

文=黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー
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 逆に、相続上も“おひとりさま”となるのは以下のようなケースだ。

(1)生涯未婚、子どもがいない、両親は死亡、ひとりっ子である。

(2)被相続人に借金があったため相続人全員が相続放棄した。

(1)の場合、相続財産は、最終的に国庫(国が所有する資産)に帰属する。ただ、そうなるまでには、相続財産管理人の選任から、債権者・受遺者への公告など面倒な手続きが必要だし、時間もかかる。事前に相続人がいないのが明白なら、遺言書を作成して、お世話になった人に遺贈するなり、団体に寄付するなり。財産の行き先を決めておいたほうが後顧の憂いはなくなる。

“おひとりさま”の相続が大変な2つの理由

 前述の小林さんのような相続人がいる“おひとりさま”の相続の場合、親の財産を子どもが相続するよりも面倒なことが多い。その理由として挙げたいのが次の2つだ。

(1)戸籍謄本の取得が大変

 相続発生後、さまざまな手続きに必要になるのが「戸籍謄本」である。銀行で預金口座を解約するにも、マイホームの相続登記を行うのも、「亡くなった方が生まれた時から亡くなるまでの連続したすべての戸籍(戸籍謄本、除籍謄本など)を持ってきてください」と言われる。相続人が誰かということを第三者に証明するには、血縁関係や婚姻関係が記載されている戸籍謄本しかないからだ。

 戸籍謄本は、いろいろな理由で書き換えられるが、その時点で効力のない事項は新しい戸籍には引き継がれない。そのため、古いものからすべて取り寄せ、自分たち以外の相続人が存在しないことを証明しなければならない。

 さらに、亡くなった人に子や父母がなく、兄弟姉妹が相続人となる場合、亡くなった人の分だけでなく、父母の分の出生から死亡までのすべての戸籍謄本が必要となる。その時点で、すでに亡くなっている兄弟姉妹がいれば、その人の分も含まれる。

 戸籍謄本自体は、自治体のホームページにある専用の申請書を提出すれば郵送などで取り寄せることができる。ただ、親族が疎遠になっていたり、関係があまり良くなかったりすると、現住所を知るだけでも大変な作業になるだろう。

 このように、兄弟姉妹や代襲相続で姪・甥が相続人になる場合、「相続人の範囲」の確定だけでも一苦労なのだ。

 なお、戸籍謄本は「相続で必要」と申し出れば、生前でも簡単に入手はできる。少なくとも、引っ越しなどで本籍地が移動した場合など、生前本人にすべて書き出しておいてもらえると、助かる遺族は多い。

(2)重要書類や相続財産の範囲

 相続人の範囲が確定できたら、次は相続財産の範囲の確定だ。しかし、一緒に生活するなどでない限り、重要な書類をどこに保管しているか、取引のある金融機関はどこか、生命保険に加入しているか、保有財産にはどのようなものがあるかなど、兄弟姉妹や甥・姪が把握し、見つけ出すのは難しい。

 プラスの財産がなく、借金などのマイナスの財産が多ければ相続放棄をすれば良いが、手続きのタイムリミットは3カ月。それまでに、すべて見つかるかどうか。

 それ以前に、「年金の支給停止」や「健康保険」「介護保険」の資格喪失届は、死後14日以内に行わなければならない。とくに年金は、死亡とともに受給権も失う。届出が遅れて死後も年金を受け取り続けると、あとから返金を求められ、面倒な手続きが増える。

 年金手帳などが見つからなければ、紛失したものとして手続きを進めることもできる。ただ、電話1本と郵送だけで手続き完了となるはずが、年金事務所まで足を運び、紛失した年金手帳が消費者金融で悪用される危険性もあるため警察に紛失届を提出する手間も増える。相続は、時間との闘いであり、手続きが煩雑になれば、その分、時間もかかってしまう。

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